Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

哲学

free, meinongian, inclusive

古典的な一階論理から踏み外す3つの方法について考えてみる。 タームの指示対象は量化のドメインのメンバーである。 自由論理free logicでは、この仮定が外れる。「ゼウス」みたいな名前は指示対象がないか、あったとしてもゼウスは量化のドメイン外に置かれ…

数理神学

落合仁司という神学研究者知ってる?本業は経済学なんだけど、俺からみるとトンデモ系なんだね。神の存在は数学的に証明できると言っている。カントールの集合論があるでしょ。…それで彼は、神には矛盾してることがたくさんあると。たとえば三位一体は、神は…

ステファヌス数

岩波文庫などでプラトンの本を手に取ると、ページの上の方に数字が印字してあるのが目につく。大学に入ったばかりの私は知らなかったのだが、これはステファノス数といって、1578年に古典学者・印刷業者のアンリ・エティエンヌ(ラテン名ヘンリクス・ステフ…

マンフォード『因果性』『形而上学』

最近翻訳されたスティーヴン・マンフォードの本2冊を読んでみた。 哲学がわかる 因果性 (A VERY SHORT INTRODUCTION) 作者: スティーヴン・マンフォード,ラニ・リル・アンユム,塩野直之,谷川卓 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/12/15 メディア: 単行…

タブラ・ラサに関するメモ

そこで、こころというものは、いわばなんの刻印もなく、どのような観念ももっていない白紙である、と想定しよう。 この有名な一文は、ロック『人間知性論』2巻1章2節にある。ロックは「白紙white paper」と書いている。熊野純彦によると*1、 ラテン語で「白…

子供の教育

ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』2巻から。 子供を勇敢さを身につけた戦士に育て上げるには、玩具を用いたりして楽しみながら行うのがよい。こうした教育観は、実は、プラトンの『法律』に原型が見られる…。そんな話を、酒の席で知人から聞いたことがある。…

ボロノイ図

最近「ボロノイ図Voronoi diagram」という概念について耳にする機会があった。直観的な説明としては、平面上に複数個の点が与えられたときに、それらの点への近さによって平面を領域分けした図のこと。領域と領域の境界線は、与えられた点と点の二等分線(の…

科学を語るとはどういうことか

最近読んだ本。 科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス) 作者: 須藤靖,伊勢田哲治 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/06/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (17件) を見る なかなかド…

ゲティア事例

1963年の論文で、エドマンド・ゲティアは知識の古典的定義に対する反例を提出したとされる。知識の古典的定義とは「知識=正当化をもつ真なる信念(justified true belief)」というもの。通称、JTB分析である。 以後、ゲティアの反例を回避するにはJTB分析…

論、主義、説

哲学において特定の立場や見解を表現するとき、大きく分けて、「〇〇論」という場合、「〇〇主義」という場合、「〇〇説」という場合の三種類があるように思う。具体例としてはこんな感じだろうか。 〇〇論:唯名論、観念論、唯物論、二元論、イデア論、独断…

意味論的パラドクス

嘘つきのパラドクスは「意味論的パラドクス」などと呼ばれる。真理は意味論的な述語だからそう呼ばれるのだけど、意味論的な述語は真理だけではないので、例えば、次のような意味論的パラドクスもある。 1 = 1 したがって、この論証は妥当ではない。 論証が…

現代存在論講義I

移動中の読書で、倉田剛『現代存在論講義I』(2017年)をざっと読んだ。読みやすくていい入門書。最後に読書案内も載っているのだが、分析形而上学は日本語でよめる入門書が多くていいですな。この読書案内には載ってなかったけど、アール・コニーとテッド・…

未開人の思考

カリエラ族の婚姻規則がクラインの四元群によって表現できるというレヴィ=ストロースの発見を紹介した後、橋爪大三郎は次のように述べている*1。 これは、なかなかのことではないだろうか。 ヨーロッパ世界が、えっちらおっちら数学をやって、「クラインの…

科学的説明のISモデル

ヘンペルによる科学的説明の理論は「DNモデル」が有名だが、彼は統計的説明にも一定の余地を残していたといわれる。ヘンペルによる統計的説明の理論は「ISモデル」と呼ばれる。ラフにいうと、ISモデルは適切な統計的説明が Pr(G|F) = r Fa ==== [r] Ga とい…

反事実条件法と歴史

最近、アメリカのドラマ『ビッグバンセオリー』を見ている。知らない人のために、wikipediaから「あらすじ」を引用しておく。 2人合わせたIQが360という二十代の仲良しオタクコンビ、レナードとシェルドンはカリフォルニア工科大学の物理学者。カリフォルニ…

プラトン実名変更説

古代ギリシャの哲学者プラトンには、次のような逸話がある。「プラトン」という名前はじつはあだ名で、本名は「アリストクレス」という*1。「プラトン」とは肩幅が広いといった意味のギリシャ語で、プラトンは立派な体格をしていたのでそう呼ばれた、と。 少…

形而上学者ウィトゲンシュタイン

形而上学者ウィトゲンシュタイン―論理・独我論・倫理 作者: 細川亮一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2002/02 メディア: 単行本 クリック: 10回 この商品を含むブログ (2件) を見る ハイデガーの研究者による、一風変わったウィトゲンシュタインの研究書…

記述理論(3)

ラッセルの「表示について」は表示句を消去することに全力を注いでいる論文で、"is an F" のような述定表現すら例外にせず、"is F'" のような代用表現に置き換えようとしている、ということを以前このブログで書いたことがある。いささか病的な雰囲気を感じ…

固有名と固有名詞

分析哲学の文献を読み始めると「固有名proper name」という言い回しが多いことに気付く。中学や高校では「固有名詞proper noun」と呼んでいたはずなのだが…と思いながらも、次第にこんな区別のことは忘れるようになる。入門書をみても 固有名(固有名詞)*1 …

フレーゲ著作集5

5巻の編者解説を読んだ。 フレーゲ著作集〈5〉数学論集 作者: G.フレーゲ,野本和幸,飯田隆,Gottlob Frege 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2001/08 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (2件) を見る このシリーズのほとんどの巻で編者…

コスパ

千葉雅也の次のツイートは色々考えさせられる。 ギャンブルってぜんぜん興味ないんだよ。だって損する可能性があるんでしょ。端的に言って、絶対に損したくないもん。ところで、ヘーゲルの翻訳をしっかり読み込むというのは、どうやっても絶対に損しない行為…

100分de名著「永遠平和のために」

この番組、興味のある本が取り上げられたときは視聴するようにしている。8月はカント「永遠平和のために」が取り上げられてるので、哲学の徒として一応観た。講師は気鋭の論客・萱野稔人氏。 この番組は25分×4回 = 100分という構成になっている。第1回目で…

不思議の国のアリス(2)

こんな本が出ているのを知った。 『不思議の国のアリス』の分析哲学 作者: 八木沢敬 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/06/16 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 個人的には、使用と言及の区別についての解説が印象的だった…

哲学がかみつく

有名な哲学者にインタビューした本は色々あって、翻訳もでている。最近、こういう本を見つけて図書館でパラ見した。 哲学がかみつく 作者: デイヴィッドエドモンズ,ナイジェルウォーバートン,David Edmonds,Nigel Warburton,佐光紀子 出版社/メーカー: 柏書…

逆バーカン式

飯田隆『言語哲学大全3』を読み返してて思ったこと。量化様相論理を解説している節で、最初に真理値ギャップを認める意味論が紹介されている。この意味論で、特に、必然性演算子の真理条件を □φがwで真 iff wRvとなるすべてのvで、もしφがvで真理値をもつな…

漱石と近世哲学

夏目漱石が哲学に造詣深かったという話はちょくちょく耳にするが、実際、小説の中でも博覧強記っぷりを披露してる。最近知った箇所を二つほど紹介してみる。 『三四郎』の冒頭で三四郎が鞄の中から「読んでも解らないベーコンの論文集」を取り出して読むとい…

フィッシュ『知覚の哲学入門』

知覚の哲学入門 作者: ウィリアムフィッシュ,William Fish,源河亨,國領佳樹,新川拓哉,山田圭一 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2014/08/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る amazonのレビューを見たら、翻訳がけなされていたので原文…

現代普遍論争

最近亡くなった、現代形而上学の重鎮アームストロングの本を読んでる。 現代普遍論争入門 (現代哲学への招待 Great Works) 作者: デイヴィッド・マレットアームストロング,David Malet Armstrong,秋葉剛史 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2013/10/23 メデ…

宮台真司のクリプキ論

小林よしのり・宮台真司・東浩紀の共著本『戦争する国の道徳』を読んでいたら、クリプキについてコメントしてあるのを見かけた。宮台や東がクリプキに言及することはこれまでにもあったが、ここでのコメントの分量は3ページほどあり、比較的まとまったコメン…

シンデレラ

中沢新一の『人類最古の哲学』という本がある。この本はシンデレラのさまざまな異文について結構詳しく取り上げている。 「シンデレラ」には確認できているだけで450以上の異文があるらしい。子供向けの上品な形態もあれば、グリム兄弟の「灰かぶりの少女」…