Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

哲学

論、主義、説

哲学において特定の立場や見解を表現するとき、大きく分けて、「〇〇論」という場合、「〇〇主義」という場合、「〇〇説」という場合の三種類があるように思う。具体例としてはこんな感じだろうか。 〇〇論:唯名論、観念論、唯物論、二元論、独断論、独我論…

意味論的パラドクス

嘘つきのパラドクスは「意味論的パラドクス」などと呼ばれる。真理は意味論的な述語だからそう呼ばれるのだけど、意味論的な述語は真理だけではないので、例えば、次のような意味論的パラドクスもある。 1 = 1 したがって、この論証は妥当ではない。 論証が…

現代存在論講義I

移動中の読書で、倉田剛『現代存在論講義I』(2017年)をざっと読んだ。読みやすくていい入門書。最後に読書案内も載っているのだが、分析形而上学は日本語でよめる入門書が多くていいですな。この読書案内には載ってなかったけど、アール・コニーとテッド・…

未開人の思考

カリエラ族の婚姻規則がクラインの四元群によって表現できるというレヴィ=ストロースの発見を紹介した後、橋爪大三郎は次のように述べている*1。 これは、なかなかのことではないだろうか。 ヨーロッパ世界が、えっちらおっちら数学をやって、「クラインの…

科学的説明のISモデル

ヘンペルによる科学的説明の理論は「DNモデル」が有名だが、彼は統計的説明にも一定の余地を残していたといわれる。ヘンペルによる統計的説明の理論は「ISモデル」と呼ばれる。ラフにいうと、ISモデルは適切な統計的説明が Pr(G|F) = r Fa ==== [r] Ga とい…

反事実条件法と歴史

最近、アメリカのドラマ『ビッグバンセオリー』を見ている。知らない人のために、wikipediaから「あらすじ」を引用しておく。 2人合わせたIQが360という二十代の仲良しオタクコンビ、レナードとシェルドンはカリフォルニア工科大学の物理学者。カリフォルニ…

プラトン実名変更説

古代ギリシャの哲学者プラトンには、次のような逸話がある。「プラトン」という名前はじつはあだ名で、本名は「アリストクレス」という*1。「プラトン」とは肩幅が広いといった意味のギリシャ語で、プラトンは立派な体格をしていたのでそう呼ばれた、と。 少…

形而上学者ウィトゲンシュタイン

形而上学者ウィトゲンシュタイン―論理・独我論・倫理 作者: 細川亮一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2002/02 メディア: 単行本 クリック: 10回 この商品を含むブログ (2件) を見る ハイデガーの研究者による、一風変わったウィトゲンシュタインの研究書…

記述理論(3)

ラッセルの「表示について」は表示句を消去することに全力を注いでいる論文で、"is an F" のような述定表現すら例外にせず、"is F'" のような代用表現に置き換えようとしている、ということを以前このブログで書いたことがある。いささか病的な雰囲気を感じ…

固有名と固有名詞

分析哲学の文献を読み始めると「固有名proper name」という言い回しが多いことに気付く。中学や高校では「固有名詞proper noun」と呼んでいたはずなのだが…と思いながらも、次第にこんな区別のことは忘れるようになる。入門書をみても 固有名(固有名詞)*1 …

フレーゲ著作集5

5巻の編者解説を読んだ。 フレーゲ著作集〈5〉数学論集 作者: G.フレーゲ,野本和幸,飯田隆,Gottlob Frege 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2001/08 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (2件) を見る このシリーズのほとんどの巻で編者…

コスパ

千葉雅也の次のツイートは色々考えさせられる。 ギャンブルってぜんぜん興味ないんだよ。だって損する可能性があるんでしょ。端的に言って、絶対に損したくないもん。ところで、ヘーゲルの翻訳をしっかり読み込むというのは、どうやっても絶対に損しない行為…

100分de名著「永遠平和のために」

この番組、興味のある本が取り上げられたときは視聴するようにしている。8月はカント「永遠平和のために」が取り上げられてるので、哲学の徒として一応観た。講師は気鋭の論客・萱野稔人氏。 この番組は25分×4回 = 100分という構成になっている。第1回目で…

不思議の国のアリス(2)

こんな本が出ているのを知った。 『不思議の国のアリス』の分析哲学 作者: 八木沢敬 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/06/16 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 個人的には、使用と言及の区別についての解説が印象的だった…

哲学がかみつく

有名な哲学者にインタビューした本は色々あって、翻訳もでている。最近、こういう本を見つけて図書館でパラ見した。 哲学がかみつく 作者: デイヴィッドエドモンズ,ナイジェルウォーバートン,David Edmonds,Nigel Warburton,佐光紀子 出版社/メーカー: 柏書…

逆バーカン式

飯田隆『言語哲学大全3』を読み返してて思ったこと。量化様相論理を解説している節で、最初に真理値ギャップを認める意味論が紹介されている。この意味論で、特に、必然性演算子の真理条件を □φがwで真 iff wRvとなるすべてのvで、もしφがvで真理値をもつな…

漱石と近世哲学

夏目漱石が哲学に造詣深かったという話はちょくちょく耳にするが、実際、小説の中でも博覧強記っぷりを披露してる。最近知った箇所を二つほど紹介してみる。 『三四郎』の冒頭で三四郎が鞄の中から「読んでも解らないベーコンの論文集」を取り出して読むとい…

フィッシュ『知覚の哲学入門』

知覚の哲学入門 作者: ウィリアムフィッシュ,William Fish,源河亨,國領佳樹,新川拓哉,山田圭一 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2014/08/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る amazonのレビューを見たら、翻訳がけなされていたので原文…

現代普遍論争

最近亡くなった、現代形而上学の重鎮アームストロングの本を読んでる。 現代普遍論争入門 (現代哲学への招待 Great Works) 作者: デイヴィッド・マレットアームストロング,David Malet Armstrong,秋葉剛史 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2013/10/23 メデ…

宮台真司のクリプキ論

小林よしのり・宮台真司・東浩紀の共著本『戦争する国の道徳』を読んでいたら、クリプキについてコメントしてあるのを見かけた。宮台や東がクリプキに言及することはこれまでにもあったが、ここでのコメントの分量は3ページほどあり、比較的まとまったコメン…

シンデレラ

中沢新一の『人類最古の哲学』という本がある。この本はシンデレラのさまざまな異文について結構詳しく取り上げている。 「シンデレラ」には確認できているだけで450以上の異文があるらしい。子供向けの上品な形態もあれば、グリム兄弟の「灰かぶりの少女」…

アリストテレスの色欲

「トリビアの泉」でこういうトリビアが紹介されていたことを知った。 アリストテレス研究者の千葉先生が出演しており、まさに身を削るような解説をされている。少し気になったので調べたところ、千葉先生が参照された箇所はおそらく『動物発生論』5巻3章だろ…

混色は神の冒涜

プラトンは混色によって色を作り出すことは神に対する冒涜行為だと言った、という話が色彩についての概説書を読んでたら書いてあった。正直言って、こういう面白可笑しい主張が昔の偉人に帰属されるときは、とりあえず疑ってかかったほうがいいと思っている…

心のウィルス

先日の記事で書いたように、ドーキンスの『神は妄想である』に目を通したので、関連しそうな別の本にも目を通してみた。別の本というのは『悪魔に仕える牧師』なのだが、手に取るまでこの本がエッセイ集だということに気付いてなかった…。 悪魔に仕える牧師 …

ドーキンスの宗教

最近『神は妄想である』を読んでみた。ドーキンスの本には色々手を出してきたけど、宗教を扱った本を読むのはこれが初めてだったりする。 神は妄想である―宗教との決別 作者: リチャード・ドーキンス,垂水雄二 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2007/05/25…

パトナムの訳書

ヒラリー・パトナムの論文集『実在論と理性』の訳者あとがき(p.384)で、飯田先生は次のように書いている。 それまでパトナムの著作の「翻訳」がなかったわけではない。ところが、そのうちの一冊は、それを手にとって見たことのあるひとならしているように…

アリストテレスの動物研究

著名な生物学者であるメダワー夫妻の『アリストテレスから動物園まで』という本を読んでいる。この本は生物学の事典なので、適当につまみ食いするのに向いている。各々の項目はA to Zで並んでおり、一番最後の項目はたしかに「動物園(Zoo)」なのだが、一番…

述語のイミ

飯田隆『言語哲学大全1』から。 一座の一階述語のイミは、その述語を満足する対象の全体によって与えられ、二座の一階述語のイミは、その関係を満足する対象の対の全体によって与えられる p.111 ここでいう「全体」は集合のことだろうか。しかし、集合は対象…

事実と事態

本屋の中でぶらついていたら、こういう本が目に留まった。 読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書) 作者: 平原卓,横槍メンゴ 出版社/メーカー: フォレスト出版 発売日: 2016/03/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 見覚えのあ…

言葉の定義

プラトンは、アカデメイアで学生たちといろいろな言葉を定義することに熱心に取り組んでいたらしい。しかし、その取り組みは一般人からするとあまりにも奇妙だったので笑いのネタにもされてきた。 例えば、「羽のない二足動物(featherless biped)」という…