読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

哲学

形而上学者ウィトゲンシュタイン

形而上学者ウィトゲンシュタイン―論理・独我論・倫理 作者: 細川亮一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2002/02 メディア: 単行本 クリック: 10回 この商品を含むブログ (2件) を見る ハイデガーの研究者による、一風変わったウィトゲンシュタインの研究書…

記述理論(3)

ラッセルの「表示について」は表示句を消去することに全力を注いでいる論文で、"is an F" のような述定表現すら例外にせず、"is F'" のような代用表現に置き換えようとしている、ということを以前このブログで書いたことがある。いささか病的な雰囲気を感じ…

固有名と固有名詞

分析哲学の文献を読み始めると「固有名proper name」という言い回しが多いことに気付く。中学や高校では「固有名詞proper noun」と呼んでいたはずなのだが…と思いながらも、次第にこんな区別のことは忘れるようになる。入門書をみても 固有名(固有名詞)*1 …

フレーゲ著作集

5巻の編者解説を読んだ。 フレーゲ著作集〈5〉数学論集 作者: G.フレーゲ,野本和幸,飯田隆,Gottlob Frege 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2001/08 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (2件) を見る このシリーズのほとんどの巻で編者…

コスパ

千葉雅也の次のツイートは色々考えさせられる。 ギャンブルってぜんぜん興味ないんだよ。だって損する可能性があるんでしょ。端的に言って、絶対に損したくないもん。ところで、ヘーゲルの翻訳をしっかり読み込むというのは、どうやっても絶対に損しない行為…

100分de名著「永遠平和のために」

この番組、興味のある本が取り上げられたときは視聴するようにしている。8月はカント「永遠平和のために」が取り上げられてるので、哲学の徒として一応観た。講師は気鋭の論客・萱野稔人氏。 この番組は25分×4回 = 100分という構成になっている。第1回目で…

不思議の国のアリス(2)

こんな本が出ているのを知った。 『不思議の国のアリス』の分析哲学 作者: 八木沢敬 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/06/16 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 個人的には、使用と言及の区別についての解説が印象的だった…

哲学がかみつく

有名な哲学者にインタビューした本は色々あって、翻訳もでている。最近、こういう本を見つけて図書館でパラ見した。 哲学がかみつく 作者: デイヴィッドエドモンズ,ナイジェルウォーバートン,David Edmonds,Nigel Warburton,佐光紀子 出版社/メーカー: 柏書…

逆バーカン式

飯田隆『言語哲学大全3』を読み返してて思ったこと。量化様相論理を解説している節で、最初に真理値ギャップを認める意味論が紹介されている。この意味論で、特に、必然性演算子の真理条件を □φがwで真 iff wRvとなるすべてのvで、もしφがvで真理値をもつな…

漱石と近世哲学

夏目漱石が哲学に造詣深かったという話はちょくちょく耳にするが、実際、小説の中でも博覧強記っぷりを披露してる。最近知った箇所を二つほど紹介してみる。 『三四郎』の冒頭で三四郎が鞄の中から「読んでも解らないベーコンの論文集」を取り出して読むとい…

フィッシュ『知覚の哲学入門』

知覚の哲学入門 作者: ウィリアムフィッシュ,William Fish,源河亨,國領佳樹,新川拓哉,山田圭一 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2014/08/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (4件) を見る amazonのレビューを見たら、翻訳がけなされていたので原文…

現代普遍論争

最近亡くなった、現代形而上学の重鎮アームストロングの本を読んでる。 現代普遍論争入門 (現代哲学への招待 Great Works) 作者: デイヴィッド・マレットアームストロング,David Malet Armstrong,秋葉剛史 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2013/10/23 メデ…

宮台真司のクリプキ論

小林よしのり・宮台真司・東浩紀の共著本『戦争する国の道徳』を読んでいたら、クリプキについてコメントしてあるのを見かけた。宮台や東がクリプキに言及することはこれまでにもあったが、ここでのコメントの分量は3ページほどあり、比較的まとまったコメン…

シンデレラ

中沢新一の『人類最古の哲学』という本がある。この本はシンデレラのさまざまな異文について結構詳しく取り上げている。 「シンデレラ」には確認できているだけで450以上の異文があるらしい。子供向けの上品な形態もあれば、グリム兄弟の「灰かぶりの少女」…

アリストテレスの色欲

「トリビアの泉」でこういうトリビアが紹介されていたことを知った。 アリストテレス研究者の千葉先生が出演しており、まさに身を削るような解説をされている。少し気になったので調べたところ、千葉先生が参照された箇所はおそらく『動物発生論』5巻3章だろ…

混色は神の冒涜

プラトンは混色によって色を作り出すことは神に対する冒涜行為だと言った、という話が色彩についての概説書を読んでたら書いてあった。正直言って、こういう面白可笑しい主張が昔の偉人に帰属されるときは、とりあえず疑ってかかったほうがいいと思っている…

心のウィルス

先日の記事で書いたように、ドーキンスの『神は妄想である』に目を通したので、関連しそうな別の本にも目を通してみた。別の本というのは『悪魔に仕える牧師』なのだが、手に取るまでこの本がエッセイ集だということに気付いてなかった…。 悪魔に仕える牧師 …

ドーキンスの宗教

最近『神は妄想である』を読んでみた。ドーキンスの本には色々手を出してきたけど、宗教を扱った本を読むのはこれが初めてだったりする。 神は妄想である―宗教との決別 作者: リチャード・ドーキンス,垂水雄二 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2007/05/25…

パトナムの訳書

ヒラリー・パトナムの論文集『実在論と理性』の訳者あとがき(p.384)で、飯田先生は次のように書いている。 それまでパトナムの著作の「翻訳」がなかったわけではない。ところが、そのうちの一冊は、それを手にとって見たことのあるひとならしているように…

アリストテレスの動物研究

著名な生物学者であるメダワー夫妻の『アリストテレスから動物園まで』という本を読んでいる。この本は生物学の事典なので、適当につまみ食いするのに向いている。各々の項目はA to Zで並んでおり、一番最後の項目はたしかに「動物園(Zoo)」なのだが、一番…

述語のイミ

飯田隆『言語哲学大全1』から。 一座の一階述語のイミは、その述語を満足する対象の全体によって与えられ、二座の一階述語のイミは、その関係を満足する対象の対の全体によって与えられる p.111 ここでいう「全体」は集合のことだろうか。しかし、集合は対象…

事実と事態

本屋の中でぶらついていたら、こういう本が目に留まった。 読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書) 作者: 平原卓,横槍メンゴ 出版社/メーカー: フォレスト出版 発売日: 2016/03/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 見覚えのあ…

言葉の定義

プラトンは、アカデメイアで学生たちといろいろな言葉を定義することに熱心に取り組んでいたらしい。しかし、その取り組みは一般人からするとあまりにも奇妙だったので笑いのネタにもされてきた。 例えば、「羽のない二足動物(featherless biped)」という…

スペイン語

「おーい、モーク」ローリーは言った。「スペイン語は話せるかい?」「わからないわ。話したことがないから。どうして?」「スペイン人かアルゼンチン人かどこかの野郎が出てきて、持ち馬について母国語で話してるんだ。…*1 話したことがなくったって、スペ…

クサンティッペ

悪妻として名高いクサンティッペにまつわるエピソードとして、次の話はよく知られている。 初めのうちはがみがみと小言を言っていたが、のちには彼に水をぶっかけさえしたクサンティッペに対して、彼はこう応じた。「ほうら、言っていたではないか。クサンテ…

普遍論争

普遍論争 近代の源流としての 作者: 山内志朗 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2008/01 メディア: 単行本 購入: 5人 クリック: 102回 この商品を含むブログ (50件) を見る だいぶ前に買って読もうとしたのだけど途中で挫折した本なのだが、今ならいけるかな…

アリストテレスの論理学

マレンボンの『後期中世の哲学』を読んでいたところ アリストテレスの論理学書は、『分析論後書』を除いて、古代末期に、ボエティウスによって翻訳されていた。p.58 という箇所が目を引いた。『オルガノン』に関してボエティウスが訳したのは『カテゴリー論…

ラッセルと大陸合理論

ラッセルに関するメモ。 野田又夫によれば、デカルトとラッセルの間には、いくつかの共通点があるのだとか*1。 数学的論理的分析を重んじた 二元論 認識と実践の区別を際立たせる 解析幾何学を数ヶ月で展開したデカルトと、『数学の原理』を数ヶ月で書いたラ…

宮台氏の科学的実在論

こういう文章を見かけたのだが アリ・フォルメン監督『コングレス未来学会議』について書きました なんだかなぁ。科学的実在論/反実在論を取り上げている最初のセクションは本文全体にとってそんなに関係あるんだろうか。関係あるにしても、このセクション…

男女平等と家族制の廃止

プラトンは『国家』5巻で男女平等を主張した(451B-457B)*1。それは当時の世界では喜劇の題材になるほどの非常識だったが、驚くべきことに現在では実現しつつある。 プラトンはさらに続けて、家族制の廃止というアイデアも打ち出した。もっとも、こちらの方…

ビッグクエスチョンズ

ビッグクエスチョンズ 哲学 (THE BIG QUESTIONS) 作者: サイモン・ブラックバーン,山邉昭則,下野葉月 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日: 2015/03/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る この本を読んでいる。ブラ…

ベキ

次の記事を読んで少し考えた。 possible - in saecula saeculorum "-potent"という接尾辞は、数学で「ベキ」と訳されるという話。「冪等idempotent」とか「冪零nilpotent」など。これと関連するのが、累乗を英語では "power" と呼ぶという事実である。例えば…

グルーのパラドクス

定評のある(?)この本を読んでいる。 パラドックスの哲学 作者: R.M.セインズブリー,Richard Mark Sainsbury,一ノ瀬正樹 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 1993/04 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 調べてみたら、こ…

DNモデル、機能的説明

宮台真司の文章を読んでいるとヘンペルの名前にたまに出くわすけど、なんか私の知ってるヘンペルとだいぶ違うんだが、それは私の理解が間違っているんだろうか。とりあえず、気になった点をいくつか記しておく。 ヘンペルやアシュビーの不可能性定理*1 アシ…

排中律

ヒュームの邦訳で見つけた面白い箇所をご紹介。 矛盾は中間がない。有と無は相いれないのように、論理学の矛盾の原理は二つの形式をもつ。一つは「AはBなり」と「AはBならず」とは矛盾である。他は「Aは非Aならず」である*1。 中間がないってのは排中律では……

教養主義

哲学で大学院に行けるかどうかの基準は単純であって、『精神現象学』を読む体力があるかどうか、そして、カント哲学をそれなりに自分なりに理解できるかどうか、というのが俺の考え。それができない人にはちょっとキツイと思うな。 — 國分功一郎 (@lethal_no…

カテゴリー的と定言的

英文でよくあるタイポに、"causal"と"casual"の混同がある。哲学用語で似たような間違いというと、私はよく"categorial"と"categorical"の例を思い出す。定訳はそれぞれ categorial:範疇的 categorical:定言的 だが、"categorical"は「絶対的な」とか「明…

記述理論(2)

「どのFもGである(Every F is G)」は、Fが空である場合にはGが何であれ真になるということを、「aはFである」という単称肯定文において単称名"a"が空である場合にまで拡張することが、一般向けの啓蒙書ではなされがちなのではないか、という疑念を前々から…

不思議の国のアリス

『不思議の国のアリス』に、山形浩生訳があるのを知って、ざっと読んでみた。というか、これまでこの本をちゃんと読んだことがなかった。 不思議の国のアリス (文春文庫) 作者: ルイスキャロル,カズモトトモミ,Lewis Carroll,山形浩生 出版社/メーカー: 文藝…

解明された意識

この連休は、デネットの『解明される意識』を適当に飛ばし読みしたりしてたのだが、心理学の話題に関して少し疑問に思ったことがある。メモしておく。 デイヴィド・ヒューベルとトーステイン・ウィーゼルが1981年にそれによってノーベル賞をもらった視覚に関…

嘘つき

嘘つきのパラドクスは、エピメニデスのパラドクスとも呼ばれる。ディオゲネス・ラエルティオスによると、このエピメニデスさんは、57年もの間眠っていたらしい*1。恐らく、この伝説を下敷きにしてであろう。ラッセルは、エピメニデスが「すべてのクレタ人は…

レモン

イギリスの論理学者E.J. Lemmonについてのメモ。 デイヴィドソンの論文「出来事の個体化」で、レモンとクワインによる出来事の個体化基準が紹介されている。なぜ論理学者のレモンが登場するの?と思っていたのだが、「行為文の論理形式」へのコメントで出来…

ラッセルの自伝

ラッセルの自伝的著作は沢山あるようだが、この本が一番分厚くて情報量が多いようだ。 ラッセル自叙伝〈第1〉1872年-1914年 (1968年) 作者: 日高一輝 出版社/メーカー: 理想社 発売日: 1968 メディア: ? この商品を含むブログを見る 図書館で1巻を借りて来て…

ルカーチ

佐々木力『数学史』という分厚い本を適当に眺めていたら、シェーラーとルカーチの名前が一緒に出てきたのを見つけて驚いた(p.369)。不勉強な私はシェーラーというと、フッサール門下でハイデガーの兄弟子、みたいなことしか知らなかったりする。 佐々木に…

バーカン式

量化様相論理で有名なバーカン式についてのメモ。 厳密含意との関連 一階論理の妥当式である分配法則 ∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ) にあらわれる実質含意を厳密含意に置き換えると ∀x□(α→β)→□(∀xα→∀xβ) となる。一見すると、これは妥当式にみえるが、証明にはバーカン…

消去による帰納

「演繹より帰納」で知られるF.ベーコンは、単純な枚挙帰納法に対して批判的だったという話を最近知った。『ノヴム・オルガヌム』1巻105節に「子供じみている」というフレーズがある。どちらかというと彼は、消去による帰納法(eliminative induction)を好ん…

オッカムの剃刀

以下は、Wikipedia「オッカムの剃刀」についてのノート。 オッカムのウィリアムの「オッカム」には2つの綴りがある。 Ockham Occam どちらでもよいのかな…。 オッカムの剃刀に似た格言が幾つか取り上げられている。ニュートンからの引用は、引用箇所が明示さ…

公理と証明

公理は証明のできない仮定とか前提だとよく言われる。しかし、現代の証明概念では公理も証明できるとされる。なぜかというと、理論θにおける証明は、θ の言語の文から成る列であり、その列のひとつひとつが、 θ の公理であるか その列において先立つ文から、…

分析哲学の新刊

最近出版された分析哲学の本を二冊購入。 松阪陽一(編)『言語哲学重要論文集』(春秋社) タイトルの通り、言語哲学の論文集。ドネランの論文が訳されているのが嬉しい。しかし、これまでにすでに日本語に訳されている論文が半分近くあるのが残念。80年代…

つつましい実証主義

柄谷行人が近著『哲学の起源』について『atプラス 思想と活動』で対談をしていて、こういうことを言ってる。 初期ギリシャ哲学というのは、資料がろくにないから、推定するほかありません。その意味では、僕のように専門的な知識を持たない者には有利なので…