偉人が言ったとされるけど,出典が見つからない文言はいろいろある.たとえば,「最近の若者は…」といった愚痴は古代ギリシャ時代からすでに言われてきた,という話はよく聞く.ソクラテスがそう言ったと紹介しているものもある.しかし,たぶん、これはガセネタなのだろう.
別の例.ラッセルは自分の生涯について次のように言ったとされる.
のちにラッセルは、自分の生涯を要約して、頭の一番良いときに数学をやり、少し悪くなると哲学をやり、もっと悪くなって、哲学もできなくなったので、歴史に手をつけた、というような放言をしている*1
同じような文言を紹介している文献は他にもある*2.しかし,典拠は記されていない.それどころか,少し違った文言になっているものもある.
ラッセルは,あるところで,知的創造力のもっとも活発な若いときは数学を,ついで哲学を,知力が衰えてからは政治をやろうと考えたと述べたことがある。*3
こちらでは「歴史」ではなく「政治」になっているし……
英語圏でも同じような疑問を持った人はいるようだ.Redditで次のような質問があがっていた.
*1:バートランド・ラッセル『外部世界はいかにして知られうるか』(中央公論社)訳者解説 (russell-j.com)
*2:岡本裕一朗『哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる』p.170