Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

マンフォード『因果性』『形而上学』

最近翻訳されたスティーヴン・マンフォードの本2冊を読んでみた。

哲学がわかる 因果性 (A VERY SHORT INTRODUCTION)

哲学がわかる 因果性 (A VERY SHORT INTRODUCTION)

 
哲学がわかる 形而上学 (A VERY SHORT INTRODUCTION)

哲学がわかる 形而上学 (A VERY SHORT INTRODUCTION)

 

どちらもコンパクトに要点が纏まっていて悪くない本だと思う。どちらかと言われれば、個人的には『因果性』の方がお薦め。『形而上学』の方はちょっと退屈だった(個人の感想です)。それと、時間の章(6章)で、現在主義は特殊相対性理論と緊張関係にあるという有名な問題を紹介する箇所が問題アリの記述になってるようだ。私の理解する限りでは、慣性系によってどの点とどの点が同時であるのか変わりうるから特権的な現在を選ぶことなどできまい、というのが(かつてパトナムが指摘した)問題なのだが、マンフォードの書き方だと、光速度が有限で伝播に時間がかかるというだけのことから現在主義に問題が生じるかのようになっていて奇妙、ということだと思う。訳者たちはカッコで文言を補いまくって説明が適切になるように仕立て直している。この力業には驚いた。現代形而上学に不信感を持っている人は「現代形而上学、やっぱダメみたいですね」と言いたくなるかもしれないが、こういう風に自浄作用がちゃんと働いているのは良いことだと思う(訳者たちも現代形而上学の研究者だし)。

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