Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

言語学

確定記述とは何か

東浩紀は「確定記述」を理解しているのか問題がXで話題になってるらしい.北大の院生が東浩紀にいろいろと突っかかっているようだ. Xユーザーの鈴木盲点(The Blind Spot)さん: 「確定記述は対象を一つに特定できるような句でなくてはならないので「男性」は…

意味場

社会システム理論では意味論semantics という概念が枢軸を成す。この概念は歴史学の観念史研究に由来する。例えば「生徒」という概念は独立自存せず「先生」「学校」…などの諸概念からなるパッケージの中で初めて意味を持つ。このパッケージを意味論という。…

言語学レクチャーシリーズ

この1年はYouTubeで講演とか講義を視聴する機会がかなり増えた。最近見つけた国立国語研究所の言語学レクチャーシリーズもなかなかいい。 国立国語研究所 言語学レクチャーシリーズ(試験版) - YouTube 個人的におすすめなのは、第1回の「音韻構造と文法」…

様々な含意関係

哲学の文献では"entail"という用語がよく出てくる。意味合いとしては、AがBをentailするとは、Aならば必ずBといったところだろうか。それも、単なる必然性ではなく意味によって・概念的に必然的、といったニュアンスも含まれる。論理的帰結関係はentailの一…

『言語を生み出す本能』を読み返す

スティーブン・ピンカーの名著『言語を生み出す本能』をひさかたぶりに読み返してみた。以前読んだときよりも知識がついたおかげか、前はほとんど流し読みしていたような箇所にも目がいくようになり、あらためて情報量の多い本だなと思った。 しかし、本書の…

記述理論(3)

ラッセルの「表示について」は表示句を消去することに全力を注いでいる論文で、"is an F" のような述定表現すら例外にせず、"is F'" のような代用表現に置き換えようとしている、ということを以前このブログで書いたことがある。いささか病的な雰囲気を感じ…

固有名と固有名詞

分析哲学の文献を読み始めると「固有名proper name」という言い回しが多いことに気付く。中学や高校では「固有名詞proper noun」と呼んでいたはずなのだが…と思いながらも、次第にこんな区別のことは忘れるようになる。入門書をみても 固有名(固有名詞)*1 …

チョムスキー雑感(3)

半年くらい前に、山形浩生が訳したThe Economist誌のチョムスキーに関する記事を読んだ。 The Economist に出た、最近のチョムスキー - 山形浩生の「経済のトリセツ」 極小プログラムとか全然知らない門外漢だけど、この紹介[特に前半]はやっぱりアンフェ…

anyの用法

"any" の用法について調べていたところ、こういうサイトに出くわした。 英会話のための英文法!限定詞「Any」のイメージと使い方!! | 飽きっぽい人のための長続き英会話 ~初心者スピーキング上達法~ こういうサイトって、なんというか、英語の堪能な人が…

チョムスキー雑感(2)

以前読んだ本を久しぶりに読み返してみた。 生成文法 作者: 渡辺明 出版社/メーカー: 東京大学出版会 発売日: 2009/01 メディア: 単行本 購入: 5人 クリック: 18回 この商品を含むブログ (7件) を見る 私の場合、この本ではじめて生成文法を勉強したという事…

チョムスキー雑感

チョムスキーは毀誉褒貶の激しい人で、言語学者の中にも彼を毛嫌いする人は多い。それにしても、チョムスキーを嫌っている言語学者が、チョムスキーについての入門書を書いていたりするのは理解しがたい。例えば、田中克彦『チョムスキー』とか町田健『チョ…

スペイン語

「おーい、モーク」ローリーは言った。「スペイン語は話せるかい?」「わからないわ。話したことがないから。どうして?」「スペイン人かアルゼンチン人かどこかの野郎が出てきて、持ち馬について母国語で話してるんだ。…*1 話したことがなくったって、スペ…

メディアはメッセージである

「メディアはメッセージである」というマクルーハンの格言は、 なにかを情報を与える意図(情報意図) その情報意図を相手に読み取らせるという伝達意図 という重要な区別を無視している、という光学さんの記事を読んだ。 flip out circuits: 「メディアはメ…

指標詞

指標詞には二種類あると言われる。 純粋指標詞pure indexical:「私」「今日」「ここ」など 直示語demonstrative:「これ」「あれ」など 指示対象を決めるために発話者の意図が絡んでくるのが直示語という感じだろうか。 こんな区別はたぶん1970年代くらいま…

記述理論(2)

「どのFもGである(Every F is G)」は、Fが空である場合にはGが何であれ真になるということを、「aはFである」という単称肯定文において単称名"a"が空である場合にまで拡張することが、一般向けの啓蒙書ではなされがちなのではないか、という疑念を前々から…

記述理論

確定記述と不確定記述の区別は、英語のように定冠詞と不定冠詞をもつ言語なら簡単につけることができるが、日本語だと難しい。この意味で、ラッセルの記述理論(theory of descriptions)は英語の文法に影響されていると言われる。しかし、さいきん飯田隆『…