Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

科学を語るとはどういうことか

最近読んだ本。 科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス) 作者: 須藤靖,伊勢田哲治 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/06/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (17件) を見る なかなかド…

inverted burial

『One Piece』46巻にある一コマについて。 以前このブログで、プラトンやらアリストテレスが人間を逆さになった植物とみなしていた、という話題を紹介したことがある。人間が口から栄養摂取するように、植物は根から栄養摂取するので、口と根が対応してると…

嘘つき(2)

ジェスパー・ホフマイヤー『生命記号論』から。 次の文は実際には何を意味しているのだろうか。「この文には三つもまつがいがある。」この文は正しいと言えるだろうか。実際には、間違いはただ一つ「まつがい」だけである。この文を正しく読めるものにするに…

対応理論

戸田山『論理学をつくる』は終盤で様相論理について簡潔な解説をしている。そこで「対応理論」という用語がでてくる(p.315)。様相論理の式とそれが妥当になるフレームの到達可能性関係の対応をあつかう理論、といったところだろうか。そこで著者が紹介して…

ゲティア事例

1963年の論文で、エドマンド・ゲティアは知識の古典的定義に対する反例を提出したとされる。知識の古典的定義とは「知識=正当化をもつ真なる信念(justified true belief)」というもの。通称、JTB分析である。 以後、ゲティアの反例を回避するにはJTB分析…

カリーのパラドクス

数理論理学をかじったことのある人は、自己言及がパラドクスを引き起こす可能性をもつことを知っている。例えば、ラッセルのパラドクスは、自分自身を含まない集合 {x | ¬x∈x} などという集合の存在を認めてしまうことから矛盾が生じる、というものだが、こ…

論、主義、説

哲学において特定の立場や見解を表現するとき、大きく分けて、「〇〇論」という場合、「〇〇主義」という場合、「〇〇説」という場合の三種類があるように思う。具体例としてはこんな感じだろうか。 〇〇論:唯名論、観念論、唯物論、二元論、独断論、独我論…

意味論的パラドクス

嘘つきのパラドクスは「意味論的パラドクス」などと呼ばれる。真理は意味論的な述語だからそう呼ばれるのだけど、意味論的な述語は真理だけではないので、例えば、次のような意味論的パラドクスもある。 1 = 1 したがって、この論証は妥当ではない。 論証が…

現代存在論講義I

移動中の読書で、倉田剛『現代存在論講義I』(2017年)をざっと読んだ。読みやすくていい入門書。最後に読書案内も載っているのだが、分析形而上学は日本語でよめる入門書が多くていいですな。この読書案内には載ってなかったけど、アール・コニーとテッド・…

結婚の掟

先日、レヴィ=ストロースの『遠近の回想』をとりあげた。この本は伝記なので、学術的な話はそれほど多くないのだが、10章「結婚の掟」は『親族の基本構造』に対する批判に答えようとしているところがあって興味深い。多少要約しながら紹介してみる。四角カ…

変換の概念

レヴィ=ストロースの伝記『遠近の回想』を流し読みした。伝記といっても、自分のキャリアについてレヴィ=ストロース本人がインタビューに答えるという体裁をとっている。会話なので読みやすい。 アメリカに亡命したとき、名前をClaude L. Straussにしよう…

未開人の思考

カリエラ族の婚姻規則がクラインの四元群によって表現できるというレヴィ=ストロースの発見を紹介した後、橋爪大三郎は次のように述べている*1。 これは、なかなかのことではないだろうか。 ヨーロッパ世界が、えっちらおっちら数学をやって、「クラインの…

『言語を生み出す本能』を読み返す

スティーブン・ピンカーの名著『言語を生み出す本能』をひさかたぶりに読み返してみた。以前読んだときよりも知識がついたおかげか、前はほとんど流し読みしていたような箇所にも目がいくようになり、あらためて情報量の多い本だなと思った。 しかし、本書の…

科学的説明のISモデル

ヘンペルによる科学的説明の理論は「DNモデル」が有名だが、彼は統計的説明にも一定の余地を残していたといわれる。ヘンペルによる統計的説明の理論は「ISモデル」と呼ばれる。ラフにいうと、ISモデルは適切な統計的説明が Pr(G|F) = r Fa ==== [r] Ga とい…

排中律の反例

排中律についてのメモ。 直観主義論理では排中律(P v not-P)が成り立たないと言われる。しかし、これは排中律の否定が成り立つということではない。排中律の否定を仮定すると直観主義論理の範囲でも矛盾が導かれるので、排中律の二重否定が成立する*1。 そ…

確証バイアス

ウェイソンの選択課題とか確証バイアスについて、少しばかり調べものをした。ウェイソンの選択課題については http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/4006/1/KJ00000137551.pdf のサーベイが(割と専門的なので理解が及ばなかったところもあっ…

エディプスコンプレックスの教義

岩波の『フロイト全集』に付いている月報20から。白井聡「いまフロイトを読むこと」 フロイトを今日あらためて読み直し、評価する際に、エディプスコンプレックスの教義をどのように取り扱うべきかという問題は、やはり避けて通ることのできない・・・この教…

バーナム効果

ドラマ 「ビッグバンセオリー」から。星占いの好きなペニーに対して、シェルドンが冷や水をぶっかけるシーン。 Sheldon: For the record, that psychotic rant was a concise summation of the research of Bertram Forer, who in 1948 proved conclusively …

産業革命の起源

山形浩生のブログ「経済のトリセツ」で、彼のamazonレビューがまとめて掲載されていたので、軽く読みふけってしまった。その中で、グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史』のレビューに追記がなされているのに気付いた*1。以前の彼のレビューはかなり本…

反事実条件法と歴史

最近、アメリカのドラマ『ビッグバンセオリー』を見ている。知らない人のために、wikipediaから「あらすじ」を引用しておく。 2人合わせたIQが360という二十代の仲良しオタクコンビ、レナードとシェルドンはカリフォルニア工科大学の物理学者。カリフォルニ…

司馬史観を問う?

テレビの歴史番組で最近よく見かける磯田道史が司馬遼太郎についての新書を上梓した。未読なのだが、amazonのレビューを見たら、歴史家が司馬遼太郎を論じることはこれまでほとんどなかった、と著者は言っているらしい。レビュアーは大御所がこれまでにも司…

プラトン実名変更説

古代ギリシャの哲学者プラトンには、次のような逸話がある。「プラトン」という名前はじつはあだ名で、本名は「アリストクレス」という*1。「プラトン」とは肩幅が広いといった意味のギリシャ語で、プラトンは立派な体格をしていたのでそう呼ばれた、と。 少…

ブロンドジョーク

ブロンド女性についてのジョークはあるが、魅力的な女性がうぬぼれが強くて得をするわけではない*1。 「ブロンドジョークblonde jokes」で検索してみると、色々見つかった。そこそこ面白いのでお試しあれ。どういう背景があるのか知らないけど、金髪女性はず…

クラスの混同

上野千鶴子『構造主義の冒険』(1985年)p.70から。 「支配の正統化」とはウェーバーが定式化して以来、支配に内在する永遠のパラドックスである。このパラドックスは、正統性は自らの内には正統化根拠を持たない、という矛盾に起因する。正統性が自らの正統…

世界史の哲学:近世篇

大澤真幸の新刊『世界史の哲学 近世篇』をぱらぱらっと眺めた。うーん…。 大澤曰く。通説では、近代科学は言葉(聖なるテクスト)による論証を事実による論証に置き換えた。しかし、ガリレオによれば、科学とは宇宙と言うわれわれの眼前につねに開かれた偉大…

トリソミー

最近、親戚の子供が生まれつきの障害で苦労しているという人の話を聞く機会があった。18番目の染色体の異常によって生じる遺伝子疾患で、18トリソミーという。恥ずかしながら全く知らない障害だった。以下、その後で自分なりに少し調べたことを簡単にメモし…

月距法

最近、歴史が面白いと思えるようになっていて、色々と啓蒙書を読んでいる。次の本はユニークで面白いと思った。 世界の歴史〈12〉ルネサンス (河出文庫) 作者: 会田雄次,中村賢二郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1989/12 メディア: 文庫 購入: 1人…

eternalwind氏追悼

俺は自分が貧乏人の生まれで、貧乏人の立場から見て、「弱者の味方リベラル様」の意見が全く役に立たず、むしろ弱者の敵になってる事実に怒ってるだけのアカウントなんですよ。たまたま受けてるのは、俺と同じような意見が世界的に表面化してるからでしょう…

選言特性

論理学のメモ。まず、次の問題を考えてみる*1。 Γ |= αvβ ならば、Γ |= α または Γ |= β といえるか?言えない場合には反例をつくれ。 答えはもちろん「言えない」。Γ = {αvβ} が反例になる。 しかし、これは古典論理の話であって、直観主義だと成り立つので…

なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか

なぜヨーロッパで資本主義が生まれたか:西洋と日本の歴史を問いなおす 作者: 関曠野 出版社/メーカー: エヌティティ出版 発売日: 2016/05/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 知り合いから強く薦められたので読んでみたのだが、正直あま…