Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

バーンスタイン『豊かさの誕生』

ウィリアム・バーンスタイン『豊かさの誕生』を読んでいる*1。 本書で目指しているのは、19世紀の初頭に合流し、その後の近代世界に飛躍的な経済成長をもたらした文化と歴史の諸潮流を明らかにすることだ。p.6 amazonのレビューなどを見ると、類書としてダ…

アウグスティヌス講話

以前、山田晶『アウグスティヌス講話』という本を読んだことがある。アウグスティヌスはカルタゴに留学したときに放蕩に目覚めてしまったという話を紹介する箇所で、京都大学に合格して京都に移ってきた若い学生が誘惑に負けてしまったようなもの、とか説明…

秘密情報機関員

クリステヴァは出身国のブルガリアが共産主義だった時代に秘密情報機関員だった、という噂が流れている。 フランスのポスト構造主義思想家で精神分析医のジュリア・クリステヴァ氏が、出身国ブルガリアで共産主義時代に秘密情報機関員だったと、仏ロプス誌が…

ゲーデルの定理(5)

「不完全性定理」というときの「完全性」の意味に関して。 最後に、公理系は完全であるかと言う問題がある。すなわち、公理系のすべてのモデルでなりたつ命題は、公理系から結果として証明されるか、という問題である。再びゲーデルは、相応に豊富な任意の公…

『ローカル女子の遠吠え』でいく静岡旅行

『ローカル女子の遠吠え』という四コマギャグマンガがある。このマンガは静岡のローカルネタを(自虐も含みながら*1)簡潔に、そして県外の人間にもわかりやすく伝えていて、とても面白い。女の子が可愛いだけのありきたりな四コマ漫画とは一線を画す、傑作…

ジジェクのチャーチル論

チャーチルの有名なパラドックス…民主主義は堕落とデマゴギーと権威の弱体化への道を開くシステムだと主張する人びとにたいして、チャーチルはこう答えた。「たしかに民主主義はありとあらゆるシステムのうちで最悪である。問題は、他のどのシステムも民主主…

ブール代数の公理系

ブール代数の公理系についてのメモ。論理学の本では、束→分配束→ブール束という順番で公理系を強化していくが、新たに公理を付け加えたことで、中には冗長になる束の公理もあるらしい。ハンティントン(1904年)の公理系は 同一律 identity 交換律 commutati…

マンフォード『因果性』『形而上学』

最近翻訳されたスティーヴン・マンフォードの本2冊を読んでみた。 哲学がわかる 因果性 (A VERY SHORT INTRODUCTION) 作者: スティーヴン・マンフォード,ラニ・リル・アンユム,塩野直之,谷川卓 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/12/15 メディア: 単行…

タブラ・ラサに関するメモ

そこで、こころというものは、いわばなんの刻印もなく、どのような観念ももっていない白紙である、と想定しよう。 この有名な一文は、ロック『人間知性論』2巻1章2節にある。ロックは「白紙white paper」と書いている。熊野純彦によると*1、 ラテン語で「白…

White Album2 アニメ版

原作のゲームをプレイした勢いで、アニメ版全13話も視聴してみた。原作でいうIntroductory chapterのアニメ化になっている。全三部のうち、私自身はIntroductory chapterが一番気に入っているので、これでいいと思う。続編は別になくていい。 アニメ版の最大…

White Album 2

『White Album 2』(Leaf 2010-11)をプレイしたので、感想を書いてみる。以下WA2と略。ネタバレはほとんどないと思うが、気にする方は注意。 WHITE ALBUM2(「introductory chapter」+「closing chapter」セット版)出版社/メーカー: リーフ発売日: 2011/12/2…

独立性と確証

確率論を勉強していると、見かけ上は違うけど実際は同値になるような定義がよく出てくる。知ってる人にとってはあまりにも基本的な話だろうけど、初学者は混乱するので備忘録的にまとめておく。 独立 AとBが確率論的に独立である(ための必要十分条件) P(A|…

イオタとラムダ

確定記述を使った主語述語構文 "The F is G." を標準的な述語論理の言語に翻訳すると ∃x(Fx & ∀y(Fy → x=y) & Gx) となる(ラッセルの記述理論)。ただし、述語論理の言語にイオタ演算子ιを付け加えて*1、"the F"を個体を指示するタームのように扱う方法も…

チャーチのラムダ計算

wikipediaの「ラムダ計算」によると 元々チャーチは、数学の基礎となり得るような完全な形式体系を構築しようとしていた。彼の体系がラッセルのパラドックスの類型に影響を受けやすい(例えば論理記号として含意 → を含むなら、λx.(x→α) にYコンビネータを適…

子供の教育

ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』2巻から。 子供を勇敢さを身につけた戦士に育て上げるには、玩具を用いたりして楽しみながら行うのがよい。こうした教育観は、実は、プラトンの『法律』に原型が見られる…。そんな話を、酒の席で知人から聞いたことがある。…

コルモゴロフ

ルイセンコ説は、権力が科学に介入するとどんな悲惨なことが起きるのかの例証として、科学史や科学哲学でよく用いられる。しかし、一体どういう理由で獲得形質の遺伝がソ連において正統な学説とみなされたのだろうか。 先日紹介したマット・リドレー『徳の起…

高齢者による交通事故

ここ数年、高齢者が運転する自動車による交通事故がニュースでよく取り上げられるようになった。これに関連して、まとめサイトなどで「老害」という言葉がよくつかわれるようにもなっている。あまりに興味はなかったのだが、頻繁に目にするので、少し考えて…

小学校の集合論

集合が小学校の課程の中に導入されたとき、多くの親達はたいへんな反発を示したらしい。習ったことのない「集合」が入ってくると、親は子供の算数の面倒をみることができなくなるからである。しかし、このことは多くの場合、無駄な心配に終わった。というの…

リドレー『徳の起源』

マット・リドレーの『徳の起源』を読んだ。以前、途中まで読んだのだが、難しくて止めてしまった覚えがある。今回はいちおう最後まで読みきったが、正直理解できなかったところも多い。ただ、中盤で誤訳をいくつか見つけたので、これが以前読むのを諦めた原…

黄金比

18禁の映画『ニンフォマニアック』(2013年)で、フィボナッチ数とか黄金比とかピタゴラスの定理の話をする場面がある。スクリプトは以下。 The [Fibonacci] sequence has an interesting connection to Pythagoras' theorem of the Golden Section. It was …

ボロノイ図

最近「ボロノイ図Voronoi diagram」という概念について耳にする機会があった。直観的な説明としては、平面上に複数個の点が与えられたときに、それらの点への近さによって平面を領域分けした図のこと。領域と領域の境界線は、与えられた点と点の二等分線(の…

リリカルLISP

最近プログラミングの勉強を始めてみた。どの言語を学ぶか迷ったけど、初心者らしく(?)Pythonを選択。Pandasの扱いに四苦八苦してますが、私は元気です。 プログラミングといえば、随分まえに「リリカルLISP」というフリーゲームをやったことがある。LISP…

科学を語るとはどういうことか

最近読んだ本。 科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス) 作者: 須藤靖,伊勢田哲治 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/06/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (17件) を見る なかなかド…

inverted burial

『One Piece』46巻にある一コマについて。 以前このブログで、プラトンやらアリストテレスが人間を逆さになった植物とみなしていた、という話題を紹介したことがある。人間が口から栄養摂取するように、植物は根から栄養摂取するので、口と根が対応してると…

嘘つき(2)

ジェスパー・ホフマイヤー『生命記号論』から。 次の文は実際には何を意味しているのだろうか。「この文には三つもまつがいがある。」この文は正しいと言えるだろうか。実際には、間違いはただ一つ「まつがい」だけである。この文を正しく読めるものにするに…

対応理論

戸田山『論理学をつくる』は終盤で様相論理について簡潔な解説をしている。そこで「対応理論」という用語がでてくる(p.315)。様相論理の式とそれが妥当になるフレームの到達可能性関係の対応をあつかう理論、といったところだろうか。そこで著者が紹介して…

ゲティア事例

1963年の論文で、エドマンド・ゲティアは知識の古典的定義に対する反例を提出したとされる。知識の古典的定義とは「知識=正当化をもつ真なる信念(justified true belief)」というもの。通称、JTB分析である。 以後、ゲティアの反例を回避するにはJTB分析…

カリーのパラドクス

数理論理学をかじったことのある人は、自己言及がパラドクスを引き起こす可能性をもつことを知っている。例えば、ラッセルのパラドクスは、自分自身を含まない集合 {x | ¬x∈x} などという集合の存在を認めてしまうことから矛盾が生じる、というものだが、こ…

論、主義、説

哲学において特定の立場や見解を表現するとき、大きく分けて、「〇〇論」という場合、「〇〇主義」という場合、「〇〇説」という場合の三種類があるように思う。具体例としてはこんな感じだろうか。 〇〇論:唯名論、観念論、唯物論、二元論、イデア論、独断…

意味論的パラドクス

嘘つきのパラドクスは「意味論的パラドクス」などと呼ばれる。真理は意味論的な述語だからそう呼ばれるのだけど、意味論的な述語は真理だけではないので、例えば、次のような意味論的パラドクスもある。 1 = 1 したがって、この論証は妥当ではない。 論証が…