社会システム理論では意味論semantics という概念が枢軸を成す。この概念は歴史学の観念史研究に由来する。例えば「生徒」という概念は独立自存せず「先生」「学校」…などの諸概念からなるパッケージの中で初めて意味を持つ。このパッケージを意味論という。
意味論の構成要素はワンワードに対応する概念のみならず「先生を敬うべし」「生徒の心を理解すべし」といったコード(指令情報)や価値観(評価情報)も含み得る。観念史という場合、個別概念や命題ではなくこうした意味論的パッケージの変遷をさす。*1
この「意味論」の用法は昔からよくわからなくて疑問に思っていた.history of ideasに由来すると言われているので,ラブジョイとかを読めばよかったのかもしれないがそこまで手が回らなかった.
最近,意味論の教科書を読んでいたら「意味の場semantic field」という用語に出くわして,ようやく得心がいった*2.意味の場は,トリーア(Trier)に代表されるドイツの言語学者たちが提唱した考え方で,語彙はそこに含まれる語から直接校正されるわけではなく,意味的に関連した語群である場から構成される,それゆえ,語の意味は単独で決まることはなく,それが置かれた場の中で他の語との関係で相対的に決まる,と.
ソシュールの構造言語学をなんとなく連想させるなぁと思ってググってみたら,そういう解説記事を見つけたので,これも納得だった.