Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

ワニのジレンマ

河岸で人食いワニが子供を人質にとり、子供の親に「自分がこれから何をするか言い当てたら子供を食わないが、不正解なら食う」と言った。これに対し、親が「あなたはその子を食うでしょう」といったらどうなるか。 ワニのパラドックス - Wikipedia これは自…

ゴットの推定

https://www.youtube.com/watch?v=8cjPClcnv50 Gottの推定を解説する上の動画をみて、「これどっかで読んだことあるような」と思い、しばらく本棚を探したところ、三浦俊彦『論理パラドクス 勝ち残り編』で「デルタt論法」という名称で紹介されているのを見…

ニューカムの問題

ニューカムの問題(ニューカムのパラドクス)は、リバーモア放射線研究所の物理学者であるウィリアム・ニューカムによって考案され、ロバート・ノージックとマーティン・ガードナーの紹介によって有名になった、とされる。しかし、考案者のニューカム博士と…

ルイセンコ

科学史や科学哲学で有名なルイセンコ事件について紹介してみる。 ソ連の生物学者トロフィム・ルイセンコはウクライナに生まれた。1928年の論文で、ルイセンコは秋まき性の植物を低温処理すると早めに出芽する「春化」を報告し、これを低温処理によって秋まき…

ラクトースオペロン

YouTubeの人気チャンネル「予備校のノリで学ぶ大学の数学・物理」で、最近、システム生物学という講座がはじまった。「物理みたいな生物学をやろう」というスローガンで、最初の二回は、遺伝子制御を微分方程式つかってモデル化するという話をされている。 …

ヘンキンの問題

ゲーデルは不動点定理を用いて「この文は証明できない」という趣旨を表現する算術の文gを構成して、gが無矛盾な公理系では証明も反証もできないことを示して、算術の不完全性を示した。 それでは、「この文は証明できる」を表現する算術の文を構成したらどう…

ワルトトイフェル

最近、ワルツの指揮者として有名なロベルト・シュトルツによるワルトトイフェルのアルバムを聴いている。ワルトトイフェルというと、スケートをする人々(スケーターズワルツ)くらいしか知らなかったのだが、「女学生」とか楽しい曲をたくさん書いた人なの…

ディカプリオの彼女

レオナルド・ディカプリオの年齢の推移と、彼女の年齢の推移を示したグラフというものを見かけた。 このグラフはなかなか味わい深い。まず、25歳がage limitとなっているのに笑ってしまうが、少し経って、1年以上彼女がいないということがなく、3年連続で彼…

エンペドクレス

「ねえ、エンペドクレスのサンダルの話知ってる?」 「え、なんだって。」 「エンペドクレスって、世界で一番最初に、純粋に形而上学的な悩みから自殺したんですって。」 「へえ。」 「それでヴェスヴィオスの火口に身を投げたんだけど、あとにサンダルが残…

大内宿とイザベラ・バード

この前紹介した、YouTubeの「ゆっくり大江戸」で大内宿の動画を見て触発されたので、その勢いで大内宿に行ってきた。知らない人向けに簡単に説明すると、大内宿は福島県南会津あたりの宿場。江戸時代の雰囲気が残った景観が魅力的で、年間100万人ちかい観光…

アルキメデスの大戦

映画「アルキメデスの大戦」を見た。思うところは色々あるのだが、一つだけ。Yahoo映画のコメントを読んだところ、「イミテーションゲーム」のパクリでは、という感想を述べる人が何人かいたのだが、私自身は昔読んだ小室直樹『危機の構造』の次の箇所を思い…

ゆっくり解説動画

このところ、暇な時間にYouTubeでゆっくり解説動画を見てる。いろいろな話題に関して、初心者向けで質の高い解説に手軽にアクセスできるので、非常に助かる。ゆっくりボイスに拒否反応を示してしまう人も多いみたいだけど、私は特に気にならないどころか、も…

学問に王道なし

この警句のルーツについては諸説ある。 おそらく一番有名なのは、ユークリッドがエジプトの王プトレマイオスにそう言ったという説。この説は5世紀の新プラトン主義者プロクロスの『ユークリッド原論1巻への注釈』で述べられているという。しかし、プロクロス…

パラドクスの効用

ラッセルのパラドクスは、パラドクスというよりも「ラッセル集合なんて存在しない」という趣旨の定理だという風に言われることがある。これは単に言葉の問題だと思うのだが、どちらの見方にも意義があると思う。 数学の基礎に関心のある哲学者なら、素朴集合…

親子婚

宮脇『中国・韓国の正体』を読んでいて少し気になったことがあったので記してみる。 著者によると、唐の帝室と貴族たちはもともと大興安嶺山脈のあたりにいた「鮮卑」と呼ばれた遊牧民出身なのだという。この王朝の異質さは、次のような事例に見て取れる。 …

コペルニクスは司祭か

ギンガリッチとマクラクランの『コペルニクス』は優れた入門書だが、翻訳で一つ気になる点がある。どうしようもなく些末な問題ではあるが。 コペルニクスはフロムボルクの司教座聖堂参事会員(カノン)だった。この翻訳ではカノンを「律修司祭」と訳している…

伝統論理と存在措定

伝統論理と現代の論理学の違いとして、主語概念の存在措定がよく指摘される。実際のところ、伝統的な三段論法の中には、存在措定なしには妥当でないものが幾つか混じっている。例えば、 すべてのMはPである すべてのSはMである よって、あるSはPである たし…

ジェンダー

ある有名な症例研究では、生後八か月の男児が包皮切除の失敗でペニスを失った。両親は有名な性研究家のジョン・マネーに相談した。マネーはかねて「自然な姿というのは、性差の現状を維持しようとする者たちの政治的戦略である」と主張していた。彼は、赤ち…

実証主義

お勉強メモ。 positiveという語*1 後期のシェリングは、これまでの哲学は消極哲学だが、自分の哲学は積極哲学positive Philosophieだと言った。このように積極的と訳す場合のpositivにはnegativが対義語となるが、事実に基づく・実定的という意味で使うとき…

二重否定除去則と排中律

直観主義論理は排中律と二重否定除去則が成り立たない論理として知られる。どちらか一方を付け加えると、他方も導出できて、古典論理になる。 それでは、排中律と二重否定除去則は同値といってよいのだろうか。もちろん、直観主義論理の上では同値なのだが、…

タブローとシークエント計算

タブローはシークエント計算の特殊例にすぎない、という話を昔聞いたことがある。一体どういうことだろう、と長いこと理解できないでいたのだが、最近になって、こういうことかな、と勝手に自己解決したのでちょっとメモしてみる。 古典論理のシークエント計…

様々な含意関係

哲学の文献では"entail"という用語がよく出てくる。意味合いとしては、AがBをentailするとは、Aならば必ずBといったところだろうか。それも、単なる必然性ではなく意味によって・概念的に必然的、といったニュアンスも含まれる。論理的帰結関係はentailの一…

グライスの「意味」

言語哲学者グライスの有名な論文「意味」は1957年に出版されたが、初稿が書かれたのはその10年ほど前だという*1。たしかに、邦訳の『論理と会話』に付けられた飯田先生の「グライス紹介」にも「発表は1957年であるが、もとの草稿は1948年に書かれたという」…

モンテホール問題

『アド・アストラ』にモンテホール問題が出てきたので、久しぶりにこの問題について考え直してみて、ふと気づいたことがあった。メモとして記してみる。 モンテがドアを開けた後で選択肢を変更したほうが正答の確率が上がるというのはパラドキシカルだと感じ…

完全なものから一部を取り除いたら不完全

「その、「二重否定除去則」を認めないと、古典論理で証明された定理の中で直観主義論理では証明できないものが出てくるんでしょう?」 「出てくるね、排中律とか、ド・モルガンの法則の一部とか」 「どうしてそんな不完全なものが許されるわけ?」 「いや、…

王水

王水(aqua regia)は金をも溶かす強酸として知られる。では、王水はどのようにして発見されたのだろうか。wikipediaの「王水」によれば 西暦800年前後、イスラム科学者のアブ・ムサ・ジャービル・イブン=ハイヤーンにより、まず食塩と硫酸から塩酸ができる…

ヒルベルトスタイル

現在、論理学での「証明」のやり方としてしばしば採用されるものとしては、「タブロー」の他に、ゲンツェンが考案した「自然演繹」と呼ばれる方法がある。そして自然演繹の方法は、かつての「公理的方法」などに比べれば、はるかに習得が容易であるしー公理…

野本『現代の論理的意味論』

先日、フリーマーケットで野本和幸『現代の論理的意味論』を¥100で購入した。大庭健『はじめての分析哲学』とか飯田隆『言語哲学大全』3巻の読書案内で紹介されていたのでだいぶ以前から気になっていた本だが、なかなか手に入らなかった。図書館で少し眺めた…

フロイト『続・精神分析入門講義』

『言語哲学大全』で推薦されている論理学の入門書、Wilfrid Hodges, Logic で、演繹的に妥当な推論の例として、次のような文章が紹介されている。 Criticisms which stem from some psychological need of those making them don't deserve a rational answe…

『日本人のための宗教原論』

この手の本は、宗教に関する日本人の誤解を正す、といった体裁をとることがよくあるが、読むたびに「本当にこれでいいのか?」と思うことが少なくない。この本の場合、イスラム教は別にしても、キリスト教と仏教には天国・地獄なんてものはない、と断言して…