Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

ガリレオの話

Amazonを見ていたら、君塚『ヨーロッパ近代史』というちくま新書Kindle版が妙に安く、またレビュー評価も高かったので、なんとなく買ってみた。タイトルに似合わず、章ごとに時代を代表するいろいろな人物を取り上げる人物伝になっているのが特徴的。ダヴィンチ、ガリレオダーウィンなど科学史に属する人物が多めに取り上げられているのも興味深い。そして、評判がよいだけあってとても読みやすい。

ただ、注意して読んでみると、ところどころで首をかしげたくなる記述もある。ガリレオの章について取り上げておこう。Kindle版を買ったのでページ数を記すことができないことを断っておく。

やがて彼自身も結婚し妻子を持つようになると

ガリレオはマリナ・ガンバと内縁関係にあったが、結婚していない。

凸レンズは拡大鏡として、凹レンズは一三世紀後半には老眼の矯正用に使われるようになって

老眼鏡も凸レンズを使うのではないだろうか。近くの物が見えないのだから。

ガリレオは、地球が西から東に自転しているとも論じていたが、クラヴィウスはこれも支持

クラヴィウスは数学の地位向上に貢献したが、ガリレオの新発見についても割合慎重な態度をとっており、地動説なんかはもってのほかだったのではないかと思う。著者も名前を挙げているプリンシペの本には次のようにある。

クラヴィウスは、・・・ガリレオの発見は天の構造の再考をうながすものだと述べました。クラヴィウスと他の多くの者は地球中心説を保持していたにもかかわらず、何人かの若いイエズス会天文学者太陽中心説に転向したように思われます。

これは『科学革命』p.87からの引用。ただ、著者がこの本を参照したのかどうかはわからない。

ガリレオは、弟子の名前を使って論稿を発表し、彗星を「月より上の世界」の問題であると、控えめながらも論じ

『偽金鑑識官』のガリレオは、むしろ彗星が地上の現象だと論じたのだと記憶している。

ガリレオの彗星についての意見は、さきのアリストテレスとブラーエとの理論を、グラッシとは正反対の仕方で妥協させ、調停したものであった。つまりアリストテレスに従って、彗星は幻日や虹と同種の月より下の大気内の現象であり、大気から垂直に上昇した蒸発気が太陽光線を反射しているのだと考え、また、ブラーエに従って、回転運動はせず、直線運動をしていると考えた*1

そして、章の最後のほうで、ガリレオが裁判で有罪になったのは、30年戦争でスペインの援助を仰ぎたかったカトリックガリレオをいけにえに捧げたから、という陰謀論が提示されている。この話ははじめて聞いたのだが、誰が言っているのだろう。はじめて聞いたので判断はペンディングにするが、正直なところ眉唾ではなかと思う…。

*1:青木『ガリレオ』p.97