最近、ワルツの指揮者として有名なロベルト・シュトルツによるワルトトイフェルのアルバムを聴いている。ワルトトイフェルというと、スケートをする人々(スケーターズワルツ)くらいしか知らなかったのだが、「女学生」とか楽しい曲をたくさん書いた人なのだね。
CD付属の解説も興味深かったのでメモしておく。
- ワルトトイフェルはフランスのワルツ王と言われるが、彼の名前はドイツ風だ。それは彼がアルザス=ロレーヌ(独名エルザス=ロートリンゲン)の生まれだから。
- パリ音楽院で学び、ビゼーやマスネと親交があった。
- 1867年のパリ万博で演奏されたヨハン・シュトラウスII世の「美しく青きドナウ」に衝撃を受け、大きな影響を受けた。ワルトトイフェルの代表作はこの後に作られたものが多い。
- ウィーン進出にも一時的に成功したが、1871年に普仏戦争でフランスが敗北したことをきっかけに撤退(?)。1870年頃、ワーグナーはある評論で「優美、淡麗、そしてゆたかな音楽性を持っていることでは、シュトラウスのワルツのどの一つをとってみても、わざわざ手数をかけてしばしば輸入される外国製のものより、はるかに優れている」と書いた。ここで「輸入される外国製のもの」として念頭に置かれているのはワルトトイフェル。ワーグナーはフランスで成功しなかった人なので、これだけ読むとひがみを感じなくもない。
- ワルトトイフェルは明治初期の鹿鳴館時代に日本でも好んで演奏された。当時はオーストリアとの国交がそれほど密接ではなかったためか、ヨハン・シュトラウスはあまりポピュラーでなかった。
ワルトトイフェルが亡くなったのは1915年だけど、彼の作風は古典的なので、20世紀になるとドビュッシーやラヴェルなど印象派が台頭してきて一気に古びてしまったという話も聞く。それは十分理解できるけど、このアルバムは聴いてて楽しいし、シュトルツの演奏も素晴らしい。