分析哲学の文献を読み始めると「固有名proper name」という言い回しが多いことに気付く。中学や高校では「固有名詞proper noun」と呼んでいたはずなのだが…と思いながらも、次第にこんな区別のことは忘れるようになる。入門書をみても
固有名(固有名詞)*1
とか
固有名あるいは固有名詞と言われる*2
とか
哲学では固有名詞のことを「固有名」と称するのが通例*3
などとある。しかし、区別をつけるとすれば、おおよそ次のような仕方で理解しておけばよいらしい、ということを最近知った*4。
固有名は前理論的な概念であり、固有名詞は冠詞のような品詞の一種であり、品詞は言語を理論化するために生じる理論的語彙である。固有名詞はひとつの単語であり、どれも固有名の資格をもつ。たとえば、SaulとKripkeはどちらも固有名詞であり、Saulは若い女性哲学者の固有名かもしれないし*5、Kripkeは様相論理の完全性を証明した論理学者を指示する固有名かもしれない。Saul Kripkeは複合表現なので固有名詞ではないが、固有名である。The Holy Roman Empire, University of Manchesterなども、固有名詞ではないが、やはり固有名である。
なるほどー。