Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

論理学

EFQ

タブローで、矛盾からは何でも言えるということを証明するにはどうするのか、という質問を見かけて、それは考えたことなかったなと思った。言語が⊥を含むかどうかで場合分けすればよいのだろうか。 ⊥を論理記号に含む言語の場合:⊥に関する推論規則として、…

ならばの推移性とMP

命題論理の話。 A→B, A |- B A→B, B→C |- A→C この二つの推論図式は互いに独立なのか、という質問を受けたので、少し考えてみた。たぶん独立なんじゃないか。要するに反例モデルを無理やり作ればいいと思うんだ。 "A→B"をふつうの実質条件文としてではなく、…

証明検索

文系の人間にとって、シークエント計算は自然演繹に比べると習得するのが少し難しい。たぶん、練習問題をたくさん解くのが遠回りなようで早道なのだが、証明図を書く練習をするのに便利なサイトを知った。 LL Toy 古典命題論理、直観主義命題論理、様相命題…

アリストテレスの論理学

マレンボンの『後期中世の哲学』を読んでいたところ アリストテレスの論理学書は、『分析論後書』を除いて、古代末期に、ボエティウスによって翻訳されていた。p.58 という箇所が目を引いた。『オルガノン』に関してボエティウスが訳したのは『カテゴリー論…

スマリヤンの三段論法

スマリヤンがお気に入りの論理的推論としてよく取り上げるもの*1。 すべての人は私の赤ちゃんを愛する。∀xLxb 私の赤ちゃんは私だけを愛する。Lbm & ∀x(Lbx → x = m) よって、私は私の赤ちゃんである。m = b 一階言語への翻訳はスマリヤンのものではない。…

旧約女神転生の論理パズル

「旧約女神転生II」というレトロゲームがある。その中で、ちょっとした論理パズルが出てくる。こんな感じだ:ホブリン、トプカプ、マシュリン、ガーゴルの四兄弟の中に、一人だけ嘘つきがいる。それは誰か? ホブリン「マシュリンが近頃嘘つきになってね…あ…

知識のパズル

三人の囚人という有名なパズルがある。 三人の囚人がいた。そこに所長がやって来て、こう言った。「ここに五枚の円板がある。三枚は白で二枚は黒だ。これをおまえたちの背中に貼りつける。他人の背中を見ることは許されるが話をしてはならない。そして、自分…

マッキンゼー式

様相論理のメモ。S4に次の公理Mを加えたものをS4.1という。 M: □◇P→◇□P この名称は論理学者マッキンゼーに由来する。S4.1に対応するフレームの条件は、反射性・推移性、そして、終点の存在(endpoint existence)、すなわち ∀w∃u [wRu & ∀t(uRt → u=t)] で…

排中律

ヒュームの邦訳で見つけた面白い箇所をご紹介。 矛盾は中間がない。有と無は相いれないのように、論理学の矛盾の原理は二つの形式をもつ。一つは「AはBなり」と「AはBならず」とは矛盾である。他は「Aは非Aならず」である*1。 中間がないってのは排中律では……

S5

様相論理のメモ。S5フレームは、KTB4ともKT5とも特徴づけられるが、KDB4とかKDB5とも特徴づけられる。とりあえず、ここでは T:□φ→φ をKDB4から導出してみる。 □φと¬φを仮定する。Bにより¬φ→□◇¬φ。Dにより□◇¬φ→◇◇¬φ。4により◇◇¬φ→◇¬φ。定義により◇¬φ…

対称性・推移性・ユークリッド性

同値関係は反射性+対称性+推移性で定義されるが、反射性+ユークリッド性でも同値関係になる。ところが、対称性+推移性はユークリッド性と同値ではない。なぜなら 対称性+推移性 ⇒ ユークリッド性 という方向は成り立つが、逆は成り立たないからだ。W = {a, b…

S4.3

様相論理のメモ。文献を見ていると、S4.3を特徴づける公理型は ◇P&◇Q → ◇(◇P&Q)∨◇(◇Q&P) □(□P→Q)∨□(□Q→P) の2種類あるようだ*1。これらが同値であることは体系Kで証明できる。これらに対応するフレーム<W, R>の到達可能性関係は、以下。 wRu & wRv → uRv v vRu</w,>…

記述理論(2)

「どのFもGである(Every F is G)」は、Fが空である場合にはGが何であれ真になるということを、「aはFである」という単称肯定文において単称名"a"が空である場合にまで拡張することが、一般向けの啓蒙書ではなされがちなのではないか、という疑念を前々から…

レモン

イギリスの論理学者E.J. Lemmonについてのメモ。 デイヴィドソンの論文「出来事の個体化」で、レモンとクワインによる出来事の個体化基準が紹介されている。なぜ論理学者のレモンが登場するの?と思っていたのだが、「行為文の論理形式」へのコメントで出来…

中間論理

論理学のメモ。直観主義より強い論理を超直観主義論理(superintuitionistic logic)と呼び、その内で古典論理より弱いものを中間論理(intermediate logic)と呼ぶ。例えば ド・モルガン論理:直観主義命題論理(IPC) + 弱排中律(not-not-P or not-P)。…

ユークリッド的関係

様相論理を勉強していると、S5フレームの到達可能性はユークリッド的とか言われる。これについて少し考えてみたい。 なぜ「ユークリッド」なのか? 前から疑問だったが、本当にユークリッドの『原論』に由来しているらしい*1。 共通概念1:同じものに等しい…

最小論理

論理学の授業で自然演繹を習うとき、最小論理にボトムの除去則、ないしは公理図式"¬A→(A→B)"を加えるとを加えると直観主義になると教わる。しかし、これは保存拡大にならない。まぁ、ボトムには導入則がないのだから、除去則を導入則によって正当化する、み…

パースの法則

パースの法則:((A→B)→A)→A 直観主義論理NJに、パースの法則を公理図式として加えると古典論理になるという話を聞いたので少し考えた。たしかに、((A→⊥)→A)→A を前提することで、((A→⊥)→⊥)→A が導出できるっぽい。つまり、二重否定除去が導出できるから、こ…

『概念記法』における命題論理の公理

フレーゲ『概念記法』における命題論理の公理は6つある*1。その中で (D→(B→A))→(B→(D→A)) が実は余計だったということが後で分かったという。また、 (B→A)→(¬A→¬B) という公理ではなく、これの逆を採用していれば3つで済んだのに、という話もある。 しかし、…

実質含意についてのメモ

論理学では、含意(⊃)の真理表は前件が偽のときは、全体が真になることを習う。このことは日常的な「ならば」の用法と食い違うことから、実質含意(material implication)のパラドクスと呼ばれる。例えば、 Q⊃(P⊃Q) ¬P⊃(P⊃Q) (P⊃Q)v(Q⊃P) こういった式が…

バーカン式

量化様相論理で有名なバーカン式についてのメモ。 その証明 時制論理で有名なアーサー・プライアーは、S5の様相命題論理に古典一階論理の公理を追加すると、バーカン式と逆バーカン式が証明できることを示した(1956年)。そして、S5より弱くできないか、と…

消去による帰納

「演繹より帰納」で知られるF.ベーコンは、単純な枚挙帰納法に対して批判的だったという話を最近知った。『ノヴム・オルガヌム』1巻105節に「子供じみている」というフレーズがある。どちらかというと彼は、消去による帰納法(eliminative induction)を好ん…

propositionalとproportional

ソーカルとブリクモンの『知の欺瞞』には、ラカンとクリステヴァが述語論理を誤解していると指摘する箇所がある。例えば、 記号論理学では、否定はwffにしか適用することができないが、ラカンは量化子に否定をつけようとする。しかも、「量化文の否定を意味…

公理と証明

公理は証明のできない仮定とか前提だとよく言われる。しかし、現代の証明概念では公理も証明できるとされる。なぜかというと、理論θにおける証明は、θ の言語の文から成る列であり、その列のひとつひとつが、 θ の公理であるか その列において先立つ文から、…

逆整礎

様相論理のメモ。レープの定理に相当する L:□(□p→p)→□p という様相論理の式を公理にすると、どういう到達可能性関係をもつフレームに対応するのか、前から気になっていた。逆整礎(converse well-founded)というフレームになるらしい。ただし、公理系KLで…

厳密含意か厳密条件法か

様相論理の歴史的な解説を読むと、C.I.ルイスの名前を見かける。それで「厳密含意strict implication」という言葉を目にするのだが、私はてっきり今でもこの用語を使うのだと思っていた。でも、条件法と含意との区別を守ろうとするなら、むしろ「厳密条件法s…

偶然性と様相オペレータ

「Pは偶然である」は「Pと¬Pはどちらも必然でない」という風に定義される。記号化すると、"▽P ≡ ¬☐P&◇P"という感じか。伝統的な哲学では、偶然の反対は必然だけど、その場合の必然は、様相論理の"☐"には対応していない気がする。ところで、近世の哲学者は、…

多値論理と様相論理

https://nagaitoshiya.com/ja/1997/luhmann04/ という記事だが、色々な箇所が変だと思う。まず冒頭に 様相論理学に対する従来のアプローチは不十分である。 とあるが、クリプキ意味論が本文中でまったく触れられていないことを思うと、「従来」とはいつのこ…

supervaluation

supervaluationismについて少し調べようと思って、曖昧性にまつわる問題について一章を割いている一ノ瀬正樹『原因と理由の迷宮』にあたってみたが、3ページで片付けられていたので(pp.126--128)、大して参考にならなかった。というか、この本のサーヴェイ部…

反射性と同一律

それほど昔のことではないのだが、「反射性と同一律はどう違うの?」という疑問を持ったことがある。…うん、まぁ大分違うよね…。関係Rが反射的と言われるのは、任意のxについてxRxが成り立つとき。例えば、実数上で定義される「≦」などは反射的。要するに、関…