Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

バーカン式

量化様相論理で有名なバーカン式についてのメモ。

その証明

時制論理で有名なアーサー・プライアーは、S5の様相命題論理に古典一階論理の公理を追加すると、バーカン式と逆バーカン式が証明できることを示した(1956年)。そして、S5より弱くできないか、と考えたE. J. レモンは、逆バーカン式はKで、バーカン式はKBで証明できることを示した。

ヒューズ&クレスウェルの教科書に基づいて、まずは、逆バーカンの証明をみてみよう。

  • ∀xα → α 全称例化
  • □(∀xα → α) 必然化
  • □∀xα → □α 分配
  • □∀α → ∀x□α 全称般化

つぎに、少し厄介なバーカン式の証明

  • ∀x□α → □α 全称例化
  • □(∀x□α → □α) 必然化
  • ◇∀x□α → ◇□α 分配
  • ◇∀x□α → α B
  • ◇∀x□α → ∀xα 全称汎化
  • □(◇∀x□α → ∀xα) 必然化
  • □◇∀x□α → □∀xα 分配
  • ∀x□α → □∀xα B
バーカン式と逆バーカン式にはそれぞれ反例がありそうなので、この証明を退けたければ、どれかしらの前提を捨てる必要がある。一般的には、全称例化を諦めるのかな。
厳密含意との関連

一階論理の妥当式である分配法則

  • ∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)

にあらわれる実質含意を厳密含意に置き換えると

  • ∀x□(α→β)→□(∀xα→∀xβ)

となる。一見すると、これは妥当式にみえるが、証明にはバーカン式

  • ∀x□φ→□∀xφ

を使う*1。証明はシンプルである。まず、φにα→βを代入して

  • ∀x□(α→β)→□∀x(α→β)

を得る。分配法則∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)は妥当式であるから、必然化により

  • □[∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ)]

が得られる。ここから公理Kとmodus ponensにより

  • □∀x(α→β)→□(∀xα→□∀xβ)]

が得られる。→の推移性により

  • ∀x□(α→β)→□(∀xα→∀xβ)

となる(証明終)。

認識論理との関連

ボックスを知識として解釈すると、バーカン式は

  • ∀xK(F(x))→K∀x F(x)

となる。前件は内部量化になっているので、事象様相で解釈する必要がある。これに対する反例は、すべての対象を見知っていて、それらが全部Fだと知っているが、自分が見知っている対象がすべての対象だということを知らない、といった状況だろうか。

*1:というか、これを証明するために、バーカンはバーカン式を措定したといった方がただしいかも。