Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

生物学

ルイセンコ

科学史や科学哲学で有名なルイセンコ事件について紹介してみる。 ソ連の生物学者トロフィム・ルイセンコはウクライナに生まれた。1928年の論文で、ルイセンコは秋まき性の植物を低温処理すると早めに出芽する「春化」を報告し、これを低温処理によって秋まき…

ラクトースオペロン

YouTubeの人気チャンネル「予備校のノリで学ぶ大学の数学・物理」で、最近、システム生物学という講座がはじまった。「物理みたいな生物学をやろう」というスローガンで、最初の二回は、遺伝子制御を微分方程式つかってモデル化するという話をされている。 …

リドレー『徳の起源』

マット・リドレーの『徳の起源』を読んだ。以前、途中まで読んだのだが、難しくて止めてしまった覚えがある。今回はいちおう最後まで読みきったが、正直理解できなかったところも多い。ただ、中盤で誤訳をいくつか見つけたので、これが以前読むのを諦めた原…

結婚の掟

先日、レヴィ=ストロースの『遠近の回想』をとりあげた。この本は伝記なので、学術的な話はそれほど多くないのだが、10章「結婚の掟」は『親族の基本構造』に対する批判に答えようとしているところがあって興味深い。多少要約しながら紹介してみる。四角カ…

未開人の思考

カリエラ族の婚姻規則がクラインの四元群によって表現できるというレヴィ=ストロースの発見を紹介した後、橋爪大三郎は次のように述べている*1。 これは、なかなかのことではないだろうか。 ヨーロッパ世界が、えっちらおっちら数学をやって、「クラインの…

トリソミー

最近、親戚の子供が生まれつきの障害で苦労しているという人の話を聞く機会があった。18番目の染色体の異常によって生じる遺伝子疾患で、18トリソミーという。恥ずかしながら全く知らない障害だったので、その後で自分なりに少し調べたことをメモしておく。 …

乳糖不耐症

乳糖不耐症(lacrose intolerant)は乳製品に含まれるラクトースを消化するラクターゼ酵素(lactase enzyme)が生成されないために身体の不調が生じる体質のことをいう。いわゆる乳製品アレルギーとは異なる。 乳糖不耐症 - Wikipedia 乳糖不耐症は異常では…

アリストテレスの動物研究

著名な生物学者であるメダワー夫妻の『アリストテレスから動物園まで』という本を読んでいる。この本は生物学の事典なので、適当につまみ食いするのに向いている。各々の項目はA to Zで並んでおり、一番最後の項目はたしかに「動物園(Zoo)」なのだが、一番…

フランケンシュタイン

メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読んだ。SFというには、人造人間を作る過程がほとんど記述されてないので肩透かしを食らった感じだが、19歳でこれを書いたというのは率直に言って本当にすごいと思う。 この手の古い作品にはよくある注意書き…

ヨーロッパウナギ

ウナギについて少し調べている。ウナギがどうやって繁殖しているのかは古代から疑問とされていた。川に生息しているウナギを捕獲して解剖しても卵巣が見つからないために、魚類とは異なるとされ、自然発生説を支持するサンプルにもなっていた。 しかし、実際…

アシモフ『生物学の歴史』

生物学の歴史 (講談社学術文庫) 作者: アイザック・アシモフ,太田次郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/07/11 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 最近文庫化されたらしい。本屋をブラブラしていたら見つけて気になったので少し読んで…

インセストについてのメモ

近親交配について少し調べたのでメモ。 それは有害なのか まぁ、一般に言われているように有害なのであろう*1。劣性の致死遺伝子は、ホモになった場合だけ発現する。一人の人間がもっている致死遺伝子の数はよく分かっていないようだが、ポイントは、近親交…

Four F's

進化的な観点からすると、すべての動物は4つのFと呼ばれる動機づけをもつと言われる、と言われる。4つのFとは Feed:餌をとること Flee:逃げること Fight:戦うこと Fuck:子孫を残すこと である*1。だが、4つ目はゴマかして書いてある本が結構ある。例え…

ユクスキュル

木田元の本を読むと、ユクスキュルという生物学者の名前によく出くわす*1。シェーラーやハイデガーはこの人の学説から大いに啓発されたらしいのだが、彼の思想のどこが斬新なのかは正直よく分からない。人間以外の動物にとっては与えられた環境が全てだとか…