Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

大澤真幸『問いの読書術』

<問い>の読書術 (朝日新書)

<問い>の読書術 (朝日新書)

 

 書評集だが、本書の特徴は、新聞の書評と比べるとかなり長めの分量のものもあることと、有名ではあってもかなり古めの本をカバーしていることだろう。扱われている本のほとんどは読んだことがなかったので、普通に勉強になった。網野史観とか、ほとんど名前しか聞いたことしかなかったし。白眉は木村政彦についての本の書評。この文章は大澤節全開という感じで、面白く読んだ。ただし、理系の啓蒙書を紹介している章の書評は本の内容を大雑把にまとめているだけだったりするので新味はなさそう。

技術的なところで疑問点を一つ。刈谷剛彦『学力と階層』の書評では、重回帰分析について老婆心的な注釈をつけると言っているが

標準誤差というのは、この方程式で導かれる理論上の値と実際のデータのあいだにどのくらい違いがあったか、実際のデータが理論上の値の周りにどのくらい散らばっていたかということを示している。p.194

用語説明しなければいけないのは、回帰係数に関する標準誤差のはずなのだが、これが説明してるのは誤差項の推定値の標準偏差ではなかろうか…。

あと、校閲が例によって杜撰。例えば

旧約聖書に入っている]「箴言」には、気の利いた格言が多くて、日本人にも人気がある。「豚に真珠」とか p.126

ここは、大澤が山本七平の記述にそのまま従っている箇所だけど、「豚に真珠」の由来って新約の「マタイ福音書」ではなかったっけ。

タイトルは、「ローマの風呂」という意味のラテン語で、現在6巻まで読める。p.148

テルマエ・ロマエ』は全6巻で完結したはずなのだが…。ちゃんと最後まで読んだんですかねぇ。