Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

成年コミックの世界(2)

ナナとカオル 6 (ジェッツコミックス)

ナナとカオル 6 (ジェッツコミックス)


紹介するまでもなく結構有名な作品だし、成年コミックの範疇に入れてよいのか微妙な気もするけど…。中々よくできているSM漫画。SMにおいて最も重要なのはお互いの深い愛情と信頼関係だという[ある意味自明な]事実を丁寧に描く。wikipediaに従って一応あらすじを引用しておくと

高校のヒロインの千草奈々とダメ生徒の杉村薫は、マンションが隣同士の幼馴染。 カオルは趣味のSMの妄想に明け暮れていたが、そんなある日、ナナがふとしたことでカオルのコレクションのボンテージ衣装を着てしまう。それをきっかけにナナとカオルの秘密の「息抜き」が始まった。

この2人の幼馴染は、幼少期はほとんど能力的に変わらなかったのだが、成長していくにつれてナナの方は才色兼備で他人からも慕われるような優等生になるのに対し、カオルの方は徐々に落ちこぼれていって、根暗なダメ人間になっていく。家は隣なのに殆ど会話もしない。
この二人が第三者からすれば全くのミスマッチであるという事実は、作品中でも強調されているといってよいと思う。例えば、二人で初詣に行ったその帰りを同級生に目撃される場面がある。大きな身長差のある後ろ姿が描かれるだけだが、釣り合ってない感じが痛々しい。

カオルの中には両価的な感情が入り混じっている。幼馴染のナナが好きなんだけど、容姿や学校での成績・人望などのあらゆる点でナナとは全く釣り合わないので、告白しようとは考えることができない。カオルはSMプレイをする内に自分のこうした複雑な心情を自覚していくことになる。
しかし、カオルは、釣り合わないということで単に卑屈になるというだけではなく、ナナを本当に優秀な学生(将来の夢は弁護士になること)だと思って尊敬している。その点で、彼は要するにいい奴である。彼と同じくナナのことが気になっている生徒会長に対して、おまえ如きがナナと釣り合うはずが無いといって罵倒するところは感動的な場面だと思う。