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Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

木田元氏の死去

ハイデガー研究者として名高い木田元氏が亡くなった。ご冥福を祈りたい。

彼の書いた哲学解説書や訳業の数々にはお世話になった。もっとも、私は現象学に関心が薄いので、彼のあまりよい読者ではない。お世話になったのはむしろ訳業の方だ。パノフスキー『象徴形式としての遠近法』やブラックバーンプラトンの『国家』』など。現象学に関心の深いひとは、メルロ=ポンティの翻訳とかでお世話になっているかもしれない。

wikipediaを見ると、彼の著作の数の多さには圧倒される。しかし、私が知る限りでも結構重複がある上に、一般向けのエッセイも多いので、正直なところ、木田氏には著作リストが示すほどには博覧強記の人というイメージはない。それこそ、パノフスキーとかブラックバーンの方が知識量に本当に圧倒される…。

重複というのは、例えば、ブラックバーンの翻訳のあとがきとか、本文の内容にはほとんど触れずに、ソクラテスが処刑された真の理由について述べられていて、それは『反哲学入門』とか別の箇所で読んだからもういいよ、せっかく、洞窟の比喩については宗教的・詩的・科学的解釈の三つがある、みたいな議論をブラックバーンがしてるのだから、そういう部分にコメントしてくれたら面白かったのに…とか考えてしまった思い出がある。

もう、本当にただの思い出だが…。

Postscript (2014/10/6)

永井均氏による冷徹(冷酷?)なツイートを発見した。

多くの人が漠然と思っていたことをはっきり言ってしまった感じである。実際、『反哲学入門』とかを読んでみても思うのは、この人ゴシップ好きそうだなぁといったことではないだろうか。上に書いたソクラテスが処刑された理由の話もそうだけし、プラトンは世界周遊旅行のなかでユダヤ人居住地にも足を運んでいてユダヤ教から影響をうけたとか(p.63)、ニーチェと妹の近親相姦のうわさとか(p.232)、そういった話をしてる箇所では筆の滑りがとてもよい。永井氏みたいな哲学者なら、プラトンの話をするならグラウコンの挑戦とか他に取り上げるべき話があるだろう、といった感想を抱いても不思議ではない、とは思う。

まぁそれはそれとして。滝浦氏といえば、『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書)でも読書案内で滝浦氏のウィトゲンシュタイン本が紹介されていた気がする。高く評価されていたのね。