英文でよくあるタイポに、"causal"と"casual"の混同がある。哲学用語で似たような間違いというと、私はよく"categorial"と"categorical"の例を思い出す。定訳はそれぞれ
- categorial:範疇的
- categorical:定言的
だが、"categorical"は「絶対的な」とか「明確な」といった程度の訳でも十分な気がする。カントの定言命法(categorical imperative)について説明する箇所でマイケル・サンデルが出した例で
The president issued a categorical denial to the media. (大統領はメディアに対して絶対的に否定しました)
というのがある。大統領の否定は断固としたものであるだけでなく、何の条件も無い。抜け道も例外も一切無い。カントのいう定言命法もまた、どんな状況でも適用されることを意味している。つまり、他に考慮すべき目的を一切持たずに何らかの行動を命じることである*1。
*1:サンデル『これからの正義の話をしよう』p.156