Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』

この本、文庫化される前に大雑把にパラパラと読んでみて凄く面白いと思って感動したのだけど、(Amazonなどの)レビューを少し調べてみると、そう簡単に鵜呑みにしてはいけないんだなと思わされた。文章は非常に説得的に書かれているというのは今でも本当にそうだと思うけど、でもAmazonのレビュアーによると、著名な心理学者ガザニガは「でしゃばりの鳥類学者」と暗にダイアモンドのことを皮肉ってるらしいし、たしかに自分の専門分野を離れてかなり大胆にいろいろ言ってる、ということくらいは素人でもわかる。『銃・病原菌・鉄』を読んでいて、「この著者は何が専門だっけ」としばしば忘れることもある。

例えば、歴史学クロスリーは、大陸の地理的・環境的要因がユーラシア大陸の優位と、アフリカ、アメリカ大陸の劣位を決定づけたというダイアモンドの立論は、説得力がないとしている。例えば、大陸が南北に長いことは技術移転と発展に不利にはたらくという彼のテーゼは、南北での人口移動が圧倒的に多かったアメリカ大陸で中世に農耕がきわめて高度に発達していたことを説明できないとか*1。へぇ、議論の余地がいろいろあるんですね。

それと、2005年度の改訂版(英語)では、日本人についてのかなり雑な(人によっては「でたらめ」と言いたくなるような)章が加筆されている*2。なんてこった、ネトウヨ的には最悪じゃないか…。「よくもだましたアアアア!!だましてくれたなアアアアア!!」

そういえば、以前にこのブログでもダイアモンドの話題を出したことがあったけど、そのときは(強迫症的な?)環境アクティビストっぽい顔をもった人物として話題にしたのだった。取り上げたのが朝日新聞の記事だったし。ん、そうか朝日か…。きれいに繋がった。

*1:クロスリー『グローバル・ヒストリーとは何か』4章、2012-09-09 - オシテオサレテ

*2:山形浩生氏が自分のホームページで訳文を掲載している。http://cruel.org/diamond/whoarethejapanese.html