Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

親子婚

宮脇『中国・韓国の正体』を読んでいて少し気になったことがあったので記してみる。

著者によると、唐の帝室と貴族たちはもともと大興安嶺山脈のあたりにいた「鮮卑」と呼ばれた遊牧民出身なのだという。この王朝の異質さは、次のような事例に見て取れる。

  • 楊貴妃は17歳の時に玄宗の息子の妃となった。 5年後の22歳の時に舅の玄宗にみそめられ、一時的に出家して夫との縁を絶った後、改めて玄宗後宮に入った。
  • また、玄宗の祖母にあたる則天武后は、太宗の後宮にいた女性で、一度は尼となったがまた召されて、太宗の息子の後宮に入ったという経歴を持つ。

この二つの事例だけを見ても、唐の帝室が儒教的な規範から完全に逸脱していることがわかる。継母と結婚するとか、息子の配偶者を娶るなんてのは儒教的な規範からすれば畜生同然だとされるからだ。実母以外の父の妻を娶ることは「レヴィレート婚」と呼ぶ習俗であり、息子の妻を娶ることも気にしないのだ、と。

この説明はけっこう説得的だと思った。ちなみに、現代日本民法735条によると、玄宗楊貴妃のようなカップルは結婚できないらしい。つまり、(楊貴妃の視点でいうと)夫と離婚したあとであっても、元夫の父親と結婚するのは制度上できないのだね。

しかし、細かいことなのだが、気になった点もある。私の理解では「レヴィレート婚」は、寡婦が亡くなった元夫の兄弟と結婚すること(逆縁婚の一種)なのだが、玄宗楊貴妃の例だと息子の嫁との結婚ということになり、これは(義理とはいえ)親子婚のような事例である。こういう事例も「レヴィレート婚」というのだろうか。なにか他の表現がありそうな気もするが、見つけられなかった。