Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

ゲーデルの定理(5)

不完全性定理」というときの「完全性」の意味に関して。

最後に、公理系は完全であるかと言う問題がある。すなわち、公理系のすべてのモデルでなりたつ命題は、公理系から結果として証明されるか、という問題である。再びゲーデルは、相応に豊富な任意の公理系が、完全ではあり得ないことを示している。*1

赤字部分は奇妙だと思われる。任意の文集合をΣ、Σがすべて成り立つモデルの集合をMod(Σ)、Mod(Σ)に属するすべてのモデルでなりたつ文の集合をTh(Mod(Σ))、Σの演繹的閉包をCn(Σ)と書くとすると

  • Th(Mod(Σ)) = Cn(Σ)

は一階述語論理の強完全性定理から証明できそうだから。

理論(ないし公理系)が完全かどうかというときに問題なのは、任意の文σについて、σないし¬σが当該の理論に入ってるかどうか、ということだと思う。ただし、完全性だけではあまり興味深い特徴にはならない。矛盾した理論は定義上完全になってしまうし、真の算術のように再帰的でない仕方で理論を指示してしまえば定義上完全になる。無矛盾で再帰的という条件を満たした上で完全かどうか、というのが理論の評価ポイントとなるのだろう。

*1:ハーツホーン『幾何学I』p.83