Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

逆バーカン式

飯田隆言語哲学大全3』を読み返してて思ったこと。量化様相論理を解説している節で、最初に真理値ギャップを認める意味論が紹介されている。この意味論で、特に、必然性演算子の真理条件を

  • □φがwで真 iff wRvとなるすべてのvで、もしφがvで真理値をもつなら、φはvで真

という風に定めると、逆バーカン式が妥当式になる気がする。

ふつう、逆バーカン式が妥当であるための必要十分条件は、量化のドメインが単調性をみたすことだと思うのだが、それは真理値ギャップを追放している場合の話で、この意味論ではそうなってないと思うのだ*1。というのも、∃x◇φ → ◇∃xφ の反例モデルを作ろうとしたら、wでは◇φのインスタンスがあるのに、wRvとなるどっかのvでは、wで◇φのインスタンスとなった個体が存在しない、というモデルをつくることになるが、この意味論では、「wで◇φのインスタンスとなった個体が存在しない」なら、φはvで真理値をもたないので、こういうモデルは反例モデルにならない。

この結果がちょっと面白いのは、この意味論のもとでも、バーカン式が妥当である必要十分条件のほうは、量化のドメインが反単調性をみたすことであるということ(p.126)。この非対称性は(慣れないせいか)どうも気味が悪い。

それはともかく、飯田先生は、この意味論の問題点として、□φ→φが妥当でなくなることを指摘している。wでφが真理値をもたなければ、たとえフレームが反射的だとしても、この式は妥当にならない。そして、この問題点を克服するには、量化のドメインが単調性をみたすことを要求するのが自然だが、その場合、フレームが対称的だとすれば、量化のドメインは反単調性もみたすことになり、すべての可能世界で量化のドメインが同一になってしまうだろう。飯田先生はこのように指摘して、真理値ギャップを追放する路線の紹介に移っている。

関連記事

*1:ドメインの単調性は∃x□φ → □∃xφ の妥当性と同値になる。この式はGhilardi Formulaと呼ばれる。