『波状言論』という東浩紀が昔発行していたメールマガジンに掲載されていた鼎談で、大澤真幸は小室直樹についてこう言っていた。
小室さんは確かに頭もいいし明快だけれども、斬新かと言えばそうでもない。僕は、小室さんの話を聞いて、ゴタゴタしていた知識がうまく整理されたとか、新しい知識を注入された、とか思ったことはありますが、しかし、何か驚くような発想というものを感じたことはありません。人間は奇抜ですが、発想は、わりと凡庸だと思います。だから、小室さんの何がいいのか、よくわからない。思想的には大塚久雄とか丸山真男とか、戦後の市民派的知識人の線ですね。彼がちょっと違うところは、そのためには絶対王政が必要だ、と言うことだけです。ヨーロッパは絶対王政があったおかげで近代になれた。日本は明治維新のときにそれらしいことをやったけれど不徹底だった、みたいな主張ですね。だから天皇と言うわけだけれども、基本は、大塚や丸山ふうの、近代主義者の線で考えているわけですよ。僕は、そういう発想にいまさらコミットする気にはなれない。
ところが、割と最近になって出版された『小室直樹の世界』という本では、ほとんど真逆の発言がされている。
小室先生の研究成果というのは、オリジナリティが非常に高い p.182
僕は、小室さんの学問的業績には非常に刺激を受けました。p.334
ウェーバーを、大塚久雄のような日本の研究者を間にはさみながら継承し、独自の理論的な明晰さで発展させたのが、小室先生でしょう。何て言いますか、思いもよらぬほどの力技ですよね。p.345
この一貫性のなさ…。態度変えすぎだろ。