昨日の記事で書いたけど、コペルニクスは「天体の運動は一様円運動であるべきだ」という古代以来のドグマにとりつかれていたというのは今ではよく知られている。しかし、そういうロマンのない話ばかり聞かされると、地動説が天下をとるうえで、コペルニクスの貢献はほとんどなかったの?という疑問が湧いてくる。科学哲学の本はあまりこの問いには答えてくれない…。私自身は、やっぱり大きな貢献があったと思いたいし、実際そう思ってる。
最近読んだギンガリッチ『誰も読まなかったコペルニクス』という本は、『天球回転論』は誰にも読まれなかったわけではないという事実を執念深く実証している。(まぁそりゃラインホルトの『プロイセン表』(1551年)は『天球回転論』をベースにしているっていうしね…) また、『プロイセン表』はプトレマイオスの体系をベースにしている『アルフォンソ表』の精度をしのぐとしている*1。
これを聞いて、ちょっと安心した。昔読んだライヘンバッハの本では、『プロイセン表』が従来のものより優れていたことを、コペルニクス説が受け入れられた理由の一つだと主張していた*2。これは古い情報なので信じていいのか不安だったが、裏付けを得たことになりそうだ…。
誰も読まなかったコペルニクス -科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険 (ハヤカワ・ノンフィクション)
- 作者: オーウェン・ギンガリッチ,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/09/22
- メディア: 単行本
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Postscript (2014/5/18)
『遠近法の精神史』所収の若桑みどりの文章を読んでいたら、結構胡散臭い記述が多いと思った。コペルニクスが1543年に『コメンタリオルス』を発表したとか、地動説が直ちに実証されたと読めるように書いてある。いかがなものかな。