Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

マット・リドレー『進化は万能である』

マット・リドレーの『進化は万能である』を読んだ。彼の本はまえに『徳の起源』を読んだことがあるが、翻訳のせいなのか読みづらくてよい印象がなかった。それと比べると、今回読んだ本はずっと読みやすい。ただ、多種多様な話題をあつかってるため、一章ごとの内容は割と薄い。

公的資金をもとにした科学研究に対する懐疑的な論調(7章)とか、公教育に対する懐疑的な論調(10章)とかを見ると、著者はリバタリアニズムにシンパシーがありそうな気がする…。なお、12章の注で、最近リバタリアンの間で再評価の進んでいるスペンサーが擁護されている*1

一番違和感があったのは人口問題を扱っている11章の後半。壮大な悲観論を展開したローマクラブなどに対する批判には同意するが、もう出生率が十分下がっているかのような書き方はどうだろう。人口置換水準の2.0を大きく上回る国は途上国にまだまだたくさんあるのだし。あと、人口爆発への答えは、強制不妊や乳幼児の高い死亡率を維持することではなくむしろ赤ん坊を生かし続けるのがよい、そうすれば人々は家族を少なく維持するように計画することだ、とあるが、それは一つの要因になるとは思うけど、もっと出生率を下げるには女子教育が重要だと思う。

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*1:この注でスペンサーを貶めた政治学者として「ダグラス・ホフスタッター」という名前が出てくるが、「リチャード・ホフスタッター」の間違いだと思う。