Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

マシュー・パリス

ソクラテスは書かぬ人だったが、弟子のプラトンソクラテスのアイデアを(どこまで忠実かは分からないが)対話篇の形で後世に残した。…という通説に反した中世の絵がある。どういうわけか、プラトンが後ろに立ってソクラテスに本を書かせている絵になっている。

 

この絵は、ジャック・デリダが『葉書』で取り上げたことでとても有名になった。オクスフォード大学のボドリアン図書館でたまたま見つけたものだという*1デリダはこの絵に意味深なものを感じとり、深読みをしていくわけだが、実際には何かの手違いでこんな絵が描かれてしまったのだろう(そんな可能性にはデリダも十分気づいているだろうが)。

この絵の作者はマシュー・パリスという12世紀の修道士だそうだ*2ラテン語読みだと、パリのマッタエウス。名前に反して、パリとはあまり関係のない人みたいだけど…。

山内志朗『普遍論争』付録の事典には載っていなかったので、『新カトリック大事典』を調べたところ、次のように説明されていた。

マシュー・パリス Matthew Paris(1200頃-1259)

イギリスの年代記作家、修道士。1217年ロンドン近郊セント・オールバンズ(Saint Albans)のベネディクト会修道院に入る。聖人伝の編纂にあたり、ウェンドーヴァのロジャー(Roger of Wendover, ?-1236)の助手をしながら年代記作家としての修行を積む。一時ノルウェーに行くが、帰国後『大年代記』(Chronica maiora)、『英国史』(Historia Anglorum)などを書き、自ら彩色装飾も施す。彼の著作には、実地の見聞に基づく一次資料が豊富に用いられてはいるが、政治的洞察力や思想的洗練とは無縁だった。

最後の一文はなんか辛らつだなぁ…。