岩波文庫などでプラトンの本を手に取ると、ページの上の方に数字が印字してあるのが目につく。これはステファノス数といって、1578年に古典学者・印刷業者のアンリ・エティエンヌ(ラテン名ヘンリクス・ステファヌス)によって刊行された3巻本のプラトン全集のページ数に由来する。ステファヌス版の全集は、ギリシャ語原文とラテン語訳を併記していて便利だったので、現代でも引用箇所を示すときにはステファヌス数を明記するのが慣例になっている。
上述のような説明は、ブラックバーンの『プラトンの『国家』』冒頭の「凡例」(p.4)で与えられている。大学に入ったころの私は、この本でステファノス数について知ったので、この本はかなり懐かしい本である。ところが、最近この箇所の邦訳に誤訳を見つけた。邦訳では、エティエンヌのプラトン全集は「ジェノヴァ」で刊行されたと書いてあるのだが、これは「ジュネーヴGeneva」の間違いである*1。ジェノヴァの綴りは「Genova」である*2。これは、木田元のような碩学にしては結構恥ずかしい間違いではないかと思われる。
なお、プラトンの著作がどのような経緯で現代に伝わったのかについては、次の本の納富先生の解説が素人にも分かりやすくて便利だ。