Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

高齢者による交通事故

ここ数年、高齢者が運転する自動車による交通事故がニュースでよく取り上げられるようになった。これに関連して、まとめサイトなどで「老害」という言葉がよくつかわれるようにもなっている。あまりに興味はなかったのだが、頻繁に目にするので、少し考えてみた。

本当は若者の方がたくさん交通事故を引き起こしているのではないか、という指摘から出発するのがいいかもしれない。例えば、1年以上前の記事だが

この記事は結構反響を呼んだようで、色々なサイトで引用されて賛否両論の意見がだされてる。あまり批判的なことを言うつもりはないが、出されているグラフの多くが、単純に事故の件数を数え上げたものであるところは、さすがに気になる。若者の方が高齢者より免許をもっていて長い時間運転するだろうから、事故を起こす割合で比較しないとアンフェアだと思われる。

上の記事のいいところは、この種の反論も想定したうえで、10万人あたりの死亡事故件数のグラフも提示していることだと思う。一応自分でも検索して似たようなグラフを見つけたので貼っておく。 

の「(8)第1当事者別の交通死亡事故発生件数」は以下のようだ。

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 このグラフをうのみにするなら、とりあえず10代と80歳以上の人々がとくに危険運転をしているようだ*1。そうすると、たしかに上の記事でも言われてるように、事故を起こしたのが70歳前後の人を、定義上は「高齢者」だから大きく取り上げるというのは、統計上、あまり正当化できない。

それでは、80歳以上の高齢者の事故なら大きく取り上げていいのかというと、それなら10代も危険運転してるのだから同じくらい大きく取り上げるべきだ、という意見も出てきそうだ。判断能力の鈍った老人に轢き殺されるのは我慢ならない、という意見をまとめサイトで見かけたのだが、これは流石にあんまりだ。判断能力の鈍った老人に轢き殺されるのは理不尽だろうが、オラついた10代のガキに危険運転で轢き殺されるのも十分理不尽だと思う。

高齢者の事故をことさらに取り上げるのは免許を自主返納させたい政府のプロパガンダだという意見も聞く。そうなのかもしれない。一方で、クローズアップ現代のアンケート調査で、自分の運転テクニックなら事故を回避できると思うか、という質問に対して高齢者は「yes」と答える割合がかなり高い、というグラフも見かける。もしこの調査が正しいのなら、自己認識を改めてもらうべく、高齢者の交通事故を狙い撃ちするような報道のあり方もある程度正当化されるかもしれない。

あまり捗捗しい成果ではないが、素人が小一時間調べて分かったのはしょせんこの程度か…。

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