Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

プラトン実名変更説

古代ギリシャの哲学者プラトンには、次のような逸話がある。「プラトン」という名前はじつはあだ名で、本名は「アリストクレス」という*1。「プラトン」とは肩幅が広いといった意味のギリシャ語で、プラトンは立派な体格をしていたのでそう呼ばれた、と。

少し調べて分かったのだが、あだ名のほうが有名になって実名を退けてしまったというこの「プラトン」実名変更説はディオゲネス=ラエルティオス『哲学者列伝』のプラトンの章に出てくる*2プラトンの父方の祖父はアリストクレスと呼ばれ、長男が父の父にちなんで名づけられる慣行があったらしい。しかし、この説の信憑性は薄い*3。この説のルーツをたどろうとしても紀元前3世紀くらいまでしかたどれない。前3世紀はプラトンの死後であるから、おそらく死後に生じた伝承である。そもそも、プラトンが長男だったという証拠はないし*4、「プラトン」というのも当時としてはありふれた名前で、あだ名らしく見えない。斎藤によれば、名前に語源的な説明を与えるギリシャ人の好みを反映した伝承だろう、とのことである。

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*1:ブラックバーンプラトンの『国家』』(木田元訳)の訳者あとがきp.245

*2:邦訳、上巻p.251f

*3:藤忍随『プラトン』(講談社学術文庫)p.17以下。アナス『プラトン』p.17以下も参照。

*4:『弁明』からアデイマントスがプラトンの兄だと分かるから。