5巻の編者解説を読んだ。
- 作者: G.フレーゲ,野本和幸,飯田隆,Gottlob Frege
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2001/08
- メディア: 単行本
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このシリーズのほとんどの巻で編者解説を書いているのは野本和幸先生だが、5巻は飯田隆先生である。大筋としては、フレーゲは同時代の数学の哲学者たちと論争を繰り広げており、そうした論争状況を整理することでフレーゲの立場というのも明確になるであろう、と。短い文章ながらかなり勉強になった。メモを残しておく。
フッサール
フッサールが『算術の哲学』における心理主義をまもなく撤回したのはフレーゲの影響による、というのがかつての通説だった。しかし、モハンティによる詳細な研究により、フレーゲの批評が出るよりも前にフッサール自身の手によって心理主義は葬られていたことが明らかになったらしい。p.327
ヒルベルト
『幾何学の基礎』における公理についてのヒルベルトの考え方は革新的で、現代論理学の創始者フレーゲであってもその革新性を理解できなかったというのが1960年代くらいまでの通説だった。しかし、この評価は20世紀後半に大きく変わった。p.327f
この点(フレーゲ・ヒルベルト論争はフレーゲの勝利だった)は『言語哲学大全』でもさりげなく触れられていた*1。私は飯田先生の立場に共感するのだが、しかし、この評価が本当に学界で定着しているのかはちょっと疑問だったりする。シャピロの『数学を哲学する』とか、割とフレーゲに冷淡だったし。