Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

哲学がかみつく

 有名な哲学者にインタビューした本は色々あって、翻訳もでている。最近、こういう本を見つけて図書館でパラ見した。

哲学がかみつく

哲学がかみつく

  • 作者: デイヴィッドエドモンズ,ナイジェルウォーバートン,David Edmonds,Nigel Warburton,佐光紀子
  • 出版社/メーカー: 柏書房
  • 発売日: 2015/12
  • メディア: 単行本
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インタビューなので概して平易だと思うけど、ところどころに致命的な誤訳がある。"the scientists were serious realists about the observable world." が「科学者[デカルト、ボイル、ニュートンら]は目に見えるものしか信じませんでした」となっていたり(p.136)。また、"So this diagnosis says that the sceptical conclusion that we don’t know anything about the world rests on a faulty or unjustified assumption" が「だから、われわれは世界のことを何もしらないという懐疑的な結論は間違いです」となっていたり(p.151)。ストラウドがそんな簡単に懐疑論論駁を認めるわけがない。

また、訳者が哲学については門外漢のため、訳語の選択には難がある。例えば、moral realismの話をしている箇所で、realistを「現実主義者」と訳しており、quasi-realistは「上辺だけの現実主義者」となっている。道徳的性質の実在性が問題なので、やはり実在論者がよいと思う。さらに、「現実主義社」となっている箇所すらあり(p.48)、編集者の校閲も十分に行き届いていない感じがする。

ちなみに、原著の末尾には読書案内のリストがあって、邦訳があるものは併記してあるのだが、クーンの『科学革命の構造』は邦訳があるのに記されてなかったりする。この翻訳はあまり評判がよくないのだが、それを踏まえているのだろうか(考えすぎか)。実際、amazonのレビューか何かでも指摘されてたけど、「発見の文脈」と「正当化の文脈」にとんでもない訳語が当ててあったのを覚えてる。

あと、図書館で読んだから関係ないけど、この本2800円とお値段が結構高い。