Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

現実性オペレータ

標準的な様相論理の言語に、現実性オペレータ@を付け加えると、色々ふしぎな結果が得られるという話。

構文論は、φがwffならば@φもwffとする。意味論は、標準的な様相論理の言語ではモデル<W, R, V>と相対的に式が評価されるのに対し、@を付け加えた場合には、例えば、<W, w@, R, V>というモデルを考える。w@はWの要素で、現実世界に対応する。モデル<W, w@, R, V>において、世界wで@φが真であるのは、このモデルにおいて、w@でφが真のとき。論理的真理の定義は、あらゆるモデルのw@で真のとき、とする。

この意味論では、

  • p ≡ @p

は論理的真理なのに

  • □(p ≡ @p)

はそうではない、といったことがおこる。w@でpは偽だが、w@Rwとなるような世界wでpが真なら、□(p→@p)はw@で偽になるからだ。そういうわけで、現実性オペレータを付け加えた言語では、必然化規則が成り立たない上に、そもそも論理的真理が必然的に真ではないことになる。これは先に言った「ふしぎな結果」の一つ*1

しかし、p→@pや□(p→@p)はもとの言語では表現不可能な真理条件的内容を表現しているのか、というとそうでもないらしい。なぜなら

  • (p ≡ @p) ≡ (p→p)
  • □(p→@p) ≡ (◇p→p)
  • □(@p→p) ≡ (p→□p)

が証明できるから*2。なんだ、現実性オペレータなんて無くてもよかったんか…。

*1:現代哲学では、アプリオリな偶然的真理の有力候補とされる。

*2:まぁ、両辺の式は真理条件的内容が同じといっても、同じなのはいわゆる一次内包であって、二次内包は異なるわけだが。