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Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

大聖堂

歴史

ケン・フォレットの代表作『大聖堂』を読んでみた。八木雄二『天使はなぜ堕落するのか』という中世哲学の入門書で、参考図書に挙げられていた作品で、前から気になっていたのだが、長編小説なのでなかなか手を出せなかった。実際に読んでみると、終盤にいくにつれて面白くなっていき、意外とあっさり読み終わった。

大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)

大聖堂 (上) (ソフトバンク文庫)

 

舞台は12世紀イングランド。ノルマンディー朝の王ヘンリー1世の死後、甥のスティーブンが王位を簒奪し、それに対する反乱が生じてイングランドは無政府状態になった。最終的には和解が成立し、反乱軍を指揮したヘンリー1世の娘マチルダの息子がスティーブンの後継者に決まった。・・・という時代状況に翻弄されながら、キングスブリッジ修道院という架空の修道院で、修道院長と建築職人が権力闘争に耐え抜いて、半世紀欠けて大聖堂を建てる、という話。

この時代はロマネスク様式からゴシック様式へと変化する過渡期に相当する。本書を読めば素人でも自然と大聖堂の建築について知識を得られる…みたいなことが言われてるけど、すみません、図解がないので何を言っているのか細かいところは全然追えなかったです。ヨーロッパの大聖堂を色々見て回れば、もっと理解が深まるんだろうか。

小説だし、現代的な脚色がなされているにせよ、中世ヨーロッパについて勉強になるのは確かである。八木先生が薦めるのもむべなるかな。

例えば、アルフレッドとアリエナの結婚は無効かどうかが問題になっている場面では、こんな議論が紹介されている。結婚が成立し、完了したとみなされるのはどの時点か。グラティアヌス(-1159)によれば、結婚の成立には両人の同意が必要だが、結婚が完成するには肉体的結合が不可欠である。だが、この説には二つの反論がある。神学的反論は、この定義によればヨセフとマリアの結婚は完了されなかったことになり、この結婚を愚弄していることになる。実際的な反論は、政略上の理由で幼児同士が結婚したのだが、花嫁ないし花婿のどちらかが思春期前に死亡したら、この結婚は無効になってしまう。

ちなみに、この小説はドラマにもなっている。第1話をちょっと視聴してみたのだが、しょっぱなでいきなりジェームズ修道院長がリミジアスではなくフィリップにホワイトシップ遭難事故の真相を告白していて吹いた。

面白かったので続編(World without End)も読んでみようかな。