Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

知識のパズル

三人の囚人という有名なパズルがある。

三人の囚人がいた。そこに所長がやって来て、こう言った。「ここに五枚の円板がある。三枚は白で二枚は黒だ。これをおまえたちの背中に貼りつける。他人の背中を見ることは許されるが話をしてはならない。そして、自分の背中の円盤の色が分かった物だけが、そしてその理由を論理的に正しく構成できた者だけが、解放される」。そして所長は、三人の囚人すべての背中に白い円板を貼った*1。 

これは単純なパズルで、他の囚人を見ると白い円板が二枚見えるので、最初は自分が黒か白か分らないのだが、他の囚人もとまどっているのを見て、そういう状況は自分は白のときしかありえないな、と推論できる。

昔、はじめてこのパズルを耳にしたときは、明らかに何らかの論理的推論をしているのにどうやって形式化すればよいのだろう、と思ったものだった。今なら公開告知論理(public announcement logic)を使うんじゃね?とか考えるけど。

それにしても、論理学者や計算機科学者たちがこの種のパズルをよく研究して成果を挙げたのに対して、ラカン派の人間がこの種のパズルについて言っていることはサッパリ分からないのは残念なことである。例えば、新宮はこのパズルにおいて時間というファクターが重要であることは明白であると述べているが、そこまではいい。しかし、次に引用する箇所は、正直いって妄言としか思えない…。

監獄の壁は言語の壁である。それは論理の壁である。[…]

の壁の外側に出るためにはどんなスピードが必要であるかを考えてみるとよい。論理が言語によって構成されているとすれば、論理の速度は音速である(論理は普遍的、よってその速度は無限大、というのは、すでに出来上がった論理から我々が抱いているイメージにすぎない)。言語も音であるのだから、したがって論理の壁を破るには、音速を越えればよいのである。

音速を越えるとき、ソニックブームが起こる。飛行機は、自分が作った音の波動を自分の周辺に持っているが、その波動の囲みを自分自身が破るとき、激しい衝撃音が出る。これがソニックブームである。自分の思考、論理、言語よりも早く動く主体は、ソニックブームを引き起こす。ラカン派「ローマ講演」の際の討論において、この喩えを用いて精神分析的解釈を説明した*2。 

ところで、上のものよりはもう少し凝ったパズルもある。うる憶えだけど、こんな感じである。1万人の市民がいる国がある。男女同数であり5000組のカップルがいるとする。不倫している女が40人ほどいる。男は自分の妻が不倫しているかどうかは分からないが、他のすべての男に関しては、彼の妻が不倫しているかどうか分かるとする。さて、あるとき国王(1万人の市民とは別)が「この国には少なくとも不倫している女が一人いる。自分の妻が不倫していると気付いた男は、翌朝、公衆の面前で自分の妻を糾弾せよ」と言う。不倫している女たちが糾弾されるのは何日後のことか?

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