Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

マッキンゼー式

様相論理のメモ。S4に次の公理Mを加えたものをS4.1という。

  • M: □◇P→◇□P

この名称は論理学者マッキンゼーに由来する。S4.1に対応するフレームの条件は、反射性・推移性、そして、終点の存在(endpoint existence)、すなわち

  • ∀w∃u [wRu & ∀t(uRt → u=t)]

である。

奇妙なことに、終点の存在というフレーム条件はマッキンゼー式そのものと対応しているわけではないらしい。それどころか、マッキンゼー式に対応するフレーム条件は一階の言語では書けないのだとか。

また、S4.1という名にも関わらず、S4.1はS5の部分システムですらない。MをS5に加えると、"P≡□P" が導出されて、単なる命題論理につぶれるからだ。しかし、Mの逆

  • ◇□P→□◇P

はギーチの公理と呼ばれ、S4にこれを加えた体系はS4.2と呼ばれる。S4.2はS4.3やS5の部分システムになる。ギーチの公理に対応するフレームの条件は

  • wRu & wRt → ∃z[uRz & tRz]

である。

ちなみに、マッキンゼーは様相量化論理の開発者の一人なのだが、同性愛者だったこともあって弾圧されて、自殺したらしい*1。同性愛者であったために酷い目にあったのはチューリングだけではなかったのだ…。

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*1:デイヴィドソン『合理性の諸問題』所収のインタビューを参照。