定評のある(?)この本を読んでいる。
- 作者: R.M.セインズブリー,Richard Mark Sainsbury,一ノ瀬正樹
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 1993/04
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
調べてみたら、この本の原著はいま3版まで出ているらしい。その序文をgoogle booksで読んだところ、新たに1章増えていて、他の章にも色々手を入れているみたいだ。うーん、原著も見てみたい。
ところで、訳者試論という部分を少し読んでみたのだが、グルーのパラドクスについて、同じデータが両立しない二つの仮説を確証してしまうことになるのが致命的、というような説明をしている…(pp.351--352)。前から思ってたけど*1、この説明はあまり好みでない。ベイズ主義の確証理論でも両立しない仮説を確証することはありうるし、そもそもセインズブリーは単に「すべてのエメラルドはグルー」という仮説を確証してしまうというのは受け入れがたい結論だ、と言っている(p.163)。「訳者試論」とはいえ、翻訳した本に書いてあることと違うことを言っているのだから、注釈があってしかるべきだと思う。
たしかに、訳者の示している解釈の可能性は、セインズブリーも註で触れている(p.183n9)。しかし、これは読者への練習問題であるわけだし、解答例には「すべてのエメラルドはグリーンである」と「すべてのエメラルドはグルーである」は厳密には不整合でないと言われているのだ(p.312)。
関連記事
*1:cf. 戸田山『科学哲学の冒険』p.87