嘘つきのパラドクスの有名な例として、エピメニデスのパラドクスが知られている。ディオゲネス・ラエルティオスによると、このエピメニデスという人は、57年もの間眠っていたらしい*1。恐らく、この伝説を下敷きにしてであろう。ラッセルは、エピメニデスが「すべてのクレタ人は嘘つきである」という寸言を述べたのは、目覚めた直後のことだったのでしょう、とトボけたことを述べている*2。「俺が57年も眠ってただって!?ウソだ!よくもだましたアアアア!!」といったところだろうか。
wikipediaによると、エピメニデスのパラドクスを現代になって明確に取り上げたのは、ラッセルが最初のようだ。「タイプ理論に基づく数理論理学」(1908年)という論文が初出のようだ。こんなところでも、やはりラッセルは偉い、ということか。
このパラドクスに触発されたらしいマンガを見かけた。その名も「うそつきパラドクス」…。
表紙からも何となくわかるように、タイトルを別にすると内容的にはパラドクスと一切関係ない。ただ、いちおう1巻の冒頭で嘘つきパラドクスについての簡単な説明がある。
私はウソつきです
彼(彼女)が本当にウソつきなら、この言葉もウソでなければならない。また、本当はウソつきでないのなら、この言葉がウソになる。
ゆえに、ウソも本当も分からないままである。
マジレスすると、最後の一文は変で、うそつき文は真なのか偽なのか「分からない」のではなく、端的に矛盾しているのだと思う。しかし、内容的には嘘つきパラドクスと一切関係ないマンガなので全く問題ない。
なお、パラドクスとは関係ないが、嘘つきに関連したマンガとしては次の作品が傑作だと思う。
私は最近までこの作品を知らなかったけど、ドラマにもなったみたいだから結構有名な作品なのかもしれない。各話のクオリティが高くて、素晴らしいギャグ漫画だった。サイコパスな主人公のひとみ先生が最高。終わり方も凄かった。