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Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

日本の起源

歴史

 二冊目

日本の起源 (atプラス叢書05)

日本の起源 (atプラス叢書05)

 

対談のせいか議論の流れがグネグネしていてつかみづらく、用語法も独特なせいで読みづらい。あまり根を詰めて読まないで、研究者の間で最近話題になっていることを大づかみに把握するくらいのつもりで気楽に読めばいいのかもしれない。もっとも、私は古い時代のことは無知なので、興味深く読めたのは主に近現代の部分だけど。

以前、小室直樹の『危機の構造』を読んだときに学んだのは、戦時中の日本は総力戦とか軍国主義とか言っても、それは欧米と比べたら全然総力戦っぽくないのだ、ということだった。しかし、そうは言っても平時と比べれば総力戦体制っぽいものはあったわけで、それが後世にどんな影響を与えたのかは研究の価値がある。著者たちが挙げるのは、まず福祉政策。厚生省は1938年に設置され、傷痍軍人や戦没者遺族へのケアを充実させるための組織だった(p.259f)。それから、食糧管理制度(1942年)。面白いことに、この種の制度は食糧の供給不足で価格が高騰したときに作られるのがふつうなのだが、日本では価格が安すぎると農民の支持が得られないから作られたのだとか(p.262f)。つくづく農本国家である…。

ところで、「天皇制」が字義通りにせよ比喩的な意味にせよ本書を貫くキーワードの一つで、それが日本史においてどんな役割を担ったのか、その功罪を検討・批判していくという感じになってる。例をひとつ。昭和天皇は皇太子時代にイギリスに外遊してリベラルな立憲君主の精神を身に着けた近代人、というのが従来のイメージだった。例えば、映画「終戦のエンペラー」とか、宮台真司のような天皇主義者が描く昭和天皇像。これらは天皇の戦争責任についても批判的である。しかし、ことはそれほど単純ではない。著者たちも言うように(p.291f)、天皇は戦争を本心では望んでいなくてずっと苦しい思いをしていた、というのは間違いであろう*1。それどころか、彼には反近代的な側面すら見られるという。宮中祭祀に熱心で、平和の神アマテラスに戦勝を祈願した罰として敗戦を捉えていた節があるとか(p.283)。うーむ…。

*1:例えば、吉田裕『昭和天皇の終戦史』などを参照。