優れた哲学者が病に倒れて早死にすることは、しばしばある。でも、殺害されるケースとなるとあまり聞かない。近代以降の哲学者で、ぱっと思いついたのは以下のケース。
- ペトルス・ラムス:アリストテレス論理学を手厳しく批判し、数学教育に力を入れたルネサンス期の重要人物。カルヴァン主義者だったため、聖バルテルミの虐殺(1572年)に巻き込まれて死亡
- ニコラ・コンドルセ:陪審定理や投票のパラドックスで知られるフランスの数学者、哲学者。共和主義者でジャコバン派の恐怖政治に反対したため、逮捕されて断頭台の露と消えた。
- モーリッツ・シュリック:論理実証主義の親玉で、ウィトゲンシュタインと親交があったことでも知られる。ウィーン大学構内で元学生に銃殺された(1936年)*1
- リチャード・モンタギュー:自然言語の意味論で知られる論理学者。「1971年3月7日、数名の仲間と自宅で夜会を開いていたモンタギューは、浴室で絞殺死体となって発見された。犯人は逃走し、事件の真相はいまだに明らかとなっていない」(wikipedia)
古代まで含めると結構悲劇的な最期を迎えた学者が多いかもしれない。アルキメデスとかセネカとかヒュパティアとか。ソクラテスは悲劇的な最期といっていいのかどうか分からん。
Postscript
アイケ・ピース『デカルト暗殺』という本を読んだ。定説によれば、デカルトはスウェーデンで肺炎にかかって客死したことになっているが、本書の著者によれば、デカルトは暗殺された疑いが濃厚とのこと。また、訳者あとがきは、悲惨な最期をとげた古今の哲学者を何人か紹介している。上のリストから漏れた人物としては、ジョルダーノ・ブルーノやエーディト・シュタイン、三木清など。