佐々木力『数学史』という分厚い本を適当に眺めていたら、シェーラーとルカーチの名前が一緒に出てきたのを見つけて驚いた(p.369)。不勉強な私はシェーラーというと、フッサール門下でハイデガーの兄弟子、みたいなことしか知らなかったりする。
佐々木によると、1926年の著作『知識形態と社会』においてシェーラーは、ルネサンス期において、どうして思弁的知識と実践的知識との融合が起こったのかについて、透徹した説明を与えたという。ざっとしか見てないので、どうも宗教的価値の低下とか世俗化といった側面を強調しただけにしか思えなかったのだが、佐々木はシェーラーをずいぶん高く評価しているようだ。それはともかく、この本は社会学の本らしく、シェーラーはコントの歴史的枠組みに強く影響されていて、マルクス主義者のルカーチへの対抗意識があるという。といってもルカーチの説明がないので、これ以上は何も分からないのだが。
もっとも、シェーラーとルカーチという組み合わせは、前にも見たことがある。田島正樹『読む哲学辞典』は、ルカーチが現象学的還元について批判めいたことを言っている箇所を引用している(p.142f)。この本を最初に読んだときは、そもそも田島が何を言っているのか全然理解できなかった(今でも理解できてない)のと同時に、ルカーチを持ち出すのが唐突に思えたのだが、シェーラーとルカーチの間にはちゃんと関連があったのね。
そういえば、ハイデガーに関心のある友人が「ルカーチ読みたい」とか言っていた気がする。「アナクロだなぁ」とか「このブサヨが…」とか思っていたけど、案外関連があったのかもしれないと反省してみる。