「演繹より帰納」で知られるF.ベーコンは、単純な枚挙帰納法に対して批判的だったという話を最近知った。『ノヴム・オルガヌム』1巻105節に「子供じみている」というフレーズがある。どちらかというと彼は、消去による帰納法(eliminative induction)を好んだらしい。これは
When you have eliminated the impossible, whatever remains, however improbable, must be the truth.
という表現で有名なシャーロック・ホームズの方法論だともされる(『四つの署名』)。ただし、消去による帰納法が本当に帰納法なのかは議論の余地がある。というのは、互いに素な仮説の集まり{H1, H2,...Hn}に関して
- H1 v H2 v ... v Hn
- not-Hi
- ∴ H1 v ... Hi-1 v Hi+1 v ... Hn
という推論は演繹的に妥当だから。いっそ単に「消去法」でいいのかもしれない。まぁ、仮説の消去がこれほどカッチリしていなければ帰納法といえるだろうけど。
なお、消去による帰納法の推論では、暗にEFQが使われていることに注意。これは、消去による帰納法が実質的には選言的三段論法(A or B, not-A / B)だから、当然ではある。