Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

軍神マルス

ネオコンの論理

ネオコンの論理

読書日記。この本は一時期話題になったけど、未読だった。本屋で見かけて未読だったことを思い出し、図書館で借りて読んでいる。9.11から10年以上経ったので、「ネオコン」という言葉は世間ではもはや忘れられようとしているかもしれない。

まだ読み終わっていないけど、序章の2ページ目で早くも分からなくなったんですが…。いや、内容的にというわけではなくて、ものすごく細かい話なんですがね。原文で

That is why on major strategic and international issues Americans are from Mars, and Europeans from Venus: They agree on little and understand one another less and less.

という箇所があって、これは有名なフレーズらしいんですが、翻訳だと

主要な戦略問題と国際問題で現在、アメリカ人が戦いの神、火星から、ヨーロッパ人が美と愛の神、金星からきたとされているのはそのためだ。両者が合意できる点はきわめて少なくなり、相互の理解も希薄になってきた。(訳書p.8)

となっている。まず、この文が置かれている文脈を説明しておこう。著者によると、ヨーロッパ人とアメリカ人は同じ世界観を共有しているとはいえないという。前者は国際協力と交渉によって国際問題に決着をつけようとする平和主義をとるのに対し、アメリカ人は国際法に懐疑的で、安全保障のためにはいまだに軍事力の維持と行使が不可欠な世界に生きていると考える。前者の見方を代表する哲学者はカントで、後者のはホッブズである*1

正直言って、たぶん上の文は翻訳できない文なのではないかという気がする。直訳すると、「アメリカ人は火星から、ヨーロッパ人は金星からきている」だけど、これだとイミフすぎる。火星と金星に対応する語は、古代ローマの軍神マルスと美と愛の神ビーナスに由来するということを踏まえると、訳書みたいなことになる。でも、「アメリカ人は戦いの神からきて、ヨーロッパ人は美と愛の神からきている」もイミフだと思うんですが。いや何となく言いたいことは分かる気はするけど、はっきりしない。

というようなことに悩んでいたので、まだ30ページくらいしか読み進められていません。あぁ、日曜が終わってしまう…。

*1:ちなみに、大澤真幸は「他者」というものをどう位置づけるかという観点からすると、現代の哲学者だと前者の見方はハーバーマスに、後者はデリダに対応するという。本当かよ。