Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

ヘレニズムの科学?

ラファエロの名画「アテネの学堂」は、哲学にも芸術にも興味ない人でも知っている。中央にプラトンアリストテレスが配置され、それぞれ天上と地上を指差しているあの絵。サイゼリヤでよく飾ってある。[前から気になっているんだけど、何で?]

アテネの学堂」という名称は、後から与えられたものであって、もとは「諸原因の認識causarum cognitio」と題されていたらしい*1。実際、描かれている哲学者たちは、ストア派キュニコス派など様々で、アテネに限定されてはいない。このことは哲学史を勉強する上でも結構重要ではないかという気がする*2

アリストテレスアレクサンダー大王の教師である*3アリストテレスの死はアテネの没落と同時期であり、歴史的にはアレキサンダー大王による大帝国の建設が続く。彼は中央アジアまで進出したものの、まもなく病死して帝国は分裂してしまう。とはいえ、帝国の版図は広大である。ギリシャ人/バルバロイという伝統的な対比はもはや成り立たず、いっそう広範な地域から知識人が現われはじめる。ストアのゼノンはキプロスの出身だし、ユークリッドはダマスカスに居住していたことがあるという。

また、文化の中心はギリシャ本土から港湾都市アレクサンドリアに移る。文化活動の中心の移動は同時に、知的関心のあり方にも変化をもたらした。例えば、エレア派やプラトンらの思弁的哲学だけでなく、技術の領域への関心が増した。有名なところだと

などがある。ありきたりな哲学史の教科書だとヘレニズムは割と簡単にスルーされてしまう気がするが、実際にはかなり重要だということが分かる。

*1:ブラックバーンプラトンの『国家』』p.230

*2:以下は大出晃『知識革命の系譜学』pp.122-124のまとめ。

*3:クリプキの例文で使われるように。