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Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

ハイパーテキスト

論理哲学論考 (岩波文庫)

論理哲学論考 (岩波文庫)


哲学探究』も岩波文庫に入ればいいのに…と思うけど実現する気配がない。
野矢訳は読みやすさに定評がある(気がする)。意訳の仕方も的確でいい。例えば、6.41節のフレーズ`Wenn es einen Wert gibt, der Wert hat’は直訳すれば「価値をもつ価値があるとすれば」だけど、「価値の名に値する価値があるとすれば」と訳されてる。頭にスッと入ってくる。
しかし、4.02節の訳は疑問だ。原文は以下

Dies sehen wir daraus, dass wir den Sinn des Satzzeichens verstehen, ohne dass er uns erklärt wurde.

「このことDies」が何を指すかが問題。本を順番通りに読んでいくと、4.016節で象形文字とアルファベットは本質的に同じであると言われ、次に4.02節で、「このこと」は我々が命題記号の意味を説明してもらわずともその意味を理解するという事実によって見てとれる、と言われる。「このこと」が4.016節を指示していると考えると(野矢訳はそうとっている)、この節は割と意味不明。
しかし、『論考』をハイパーテキストとして読むなら、4.02の前は4.01節である。そこでは「命題は現実の像である」と言われている。このことが、命題記号の意味を説明してもらわずともその意味を理解するという事実によって見てとれるのである。