Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

論理学

完全なものから一部を取り除いたら不完全

「その、「二重否定除去則」を認めないと、古典論理で証明された定理の中で直観主義論理では証明できないものが出てくるんでしょう?」 「出てくるね、排中律とか、ド・モルガンの法則の一部とか」 「どうしてそんな不完全なものが許されるわけ?」 「いや、…

ヒルベルトスタイル

現在、論理学での「証明」のやり方としてしばしば採用されるものとしては、「タブロー」の他に、ゲンツェンが考案した「自然演繹」と呼ばれる方法がある。そして自然演繹の方法は、かつての「公理的方法」などに比べれば、はるかに習得が容易であるしー公理…

free, meinongian, inclusive

古典的な一階論理から踏み外す3つの方法について考えてみる。 タームの指示対象は量化のドメインのメンバーである。 自由論理free logicでは、この仮定が外れる。「ゼウス」みたいな名前は指示対象がないか、あったとしてもゼウスは量化のドメイン外に置かれ…

ゲーデルの定理(6)

「自然数論は無矛盾であるならば不完全である」、これがゲーデルの第一不完全性定理である。さらにゲーデルはもっと驚くべき定理を証明した。今自然数論の無矛盾性が証明されたと仮定しよう。このとき「この命題は証明可能でない」という命題が論理的に真で…

ゲーデルの定理(5)

「不完全性定理」というときの「完全性」の意味に関して。 最後に、公理系は完全であるかと言う問題がある。すなわち、公理系のすべてのモデルでなりたつ命題は、公理系から結果として証明されるか、という問題である。再びゲーデルは、相応に豊富な任意の公…

ブール代数の公理系

ブール代数の公理系についてのメモ。論理学の本では、束→分配束→ブール束という順番で公理系を強化していくが、新たに公理を付け加えたことで、中には冗長になる束の公理もあるらしい。ハンティントン(1904年)の公理系は 同一律 identity 交換律 commutati…

イオタとラムダ

確定記述を使った主語述語構文 "The F is G." を標準的な述語論理の言語に翻訳すると ∃x(Fx & ∀y(Fy → x=y) & Gx) となる(ラッセルの記述理論)。ただし、述語論理の言語にイオタ演算子ιを付け加えて*1、"the F"を個体を指示するタームのように扱う方法も…

チャーチのラムダ計算

wikipediaの「ラムダ計算」によると 元々チャーチは、数学の基礎となり得るような完全な形式体系を構築しようとしていた。彼の体系がラッセルのパラドックスの類型に影響を受けやすい(例えば論理記号として含意 → を含むなら、λx.(x→α) にYコンビネータを適…

嘘つき(2)

ジェスパー・ホフマイヤー『生命記号論』から。 次の文は実際には何を意味しているのだろうか。「この文には三つもまつがいがある。」この文は正しいと言えるだろうか。実際には、間違いはただ一つ「まつがい」だけである。この文を正しく読めるものにするに…

対応理論

戸田山『論理学をつくる』は終盤で様相論理について簡潔な解説をしている。そこで「対応理論」という用語がでてくる(p.315)。様相論理の式とそれが妥当になるフレームの到達可能性関係の対応をあつかう理論、といったところだろうか。そこで著者が紹介して…

カリーのパラドクス

数理論理学をかじったことのある人は、自己言及がパラドクスを引き起こす可能性をもつことを知っている。例えば、ラッセルのパラドクスは、自分自身を含まない集合 {x | ¬x∈x} などという集合の存在を認めてしまうことから矛盾が生じる、というものだが、こ…

意味論的パラドクス

嘘つきのパラドクスは「意味論的パラドクス」などと呼ばれる。真理は意味論的な述語だからそう呼ばれるのだけど、意味論的な述語は真理だけではないので、例えば、次のような意味論的パラドクスもある。 1 = 1 したがって、この論証は妥当ではない。 論証が…

排中律の反例

排中律についてのメモ。 直観主義論理では排中律(P v not-P)が成り立たないと言われる。しかし、これは排中律の否定が成り立つということではない。排中律の否定を仮定すると直観主義論理の範囲でも矛盾が導かれるので、排中律の二重否定が成立する*1。 そ…

クラスの混同

上野千鶴子『構造主義の冒険』(1985年)p.70から。 「支配の正統化」とはウェーバーが定式化して以来、支配に内在する永遠のパラドックスである。このパラドックスは、正統性は自らの内には正統化根拠を持たない、という矛盾に起因する。正統性が自らの正統…

選言特性

論理学のメモ。まず、次の問題を考えてみる*1。 Γ |= αvβ ならば、Γ |= α または Γ |= β といえるか?言えない場合には反例をつくれ。 答えはもちろん「言えない」。Γ = {αvβ} が反例になる。 しかし、これは古典論理の話であって、直観主義だと成り立つので…

形而上学者ウィトゲンシュタイン

形而上学者ウィトゲンシュタイン―論理・独我論・倫理 作者: 細川亮一 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2002/02 メディア: 単行本 クリック: 10回 この商品を含むブログ (2件) を見る ハイデガーの研究者による、一風変わったウィトゲンシュタインの研究書…

命題変数

古典命題論理についてのメモ。命題論理において A v not-A A → A のような式はトートロジーと呼ばれる。Pをどのように解釈しようと、これらの式は常に真になる。 この「どのように解釈しようと」という部分を、対象言語の中で直接に表現する方法として、命題…

ロビンソン算術

ロビンソン算術Qは以下7つの式(の全称閉包)を公理にもつ。 Sx ≠ 0 Sx = Sy → x = y x ≠ 0 → ∃y(Sy = x) x+0 = x x+Sy = S(x+y) x・0 = 0 x・Sy = (x・y)+x 不等号は次の定義によって導入する。 x < y ≡ ∃z(x+Sz = y) フランセーン『ゲーデルの定理』はよく…

anyの用法

"any" の用法について調べていたところ、こういうサイトに出くわした。 英会話のための英文法!限定詞「Any」のイメージと使い方!! | 飽きっぽい人のための長続き英会話 ~初心者スピーキング上達法~ こういうサイトって、なんというか、英語の堪能な人が…

逆バーカン式

飯田隆『言語哲学大全3』を読み返してて思ったこと。量化様相論理を解説している節で、最初に真理値ギャップを認める意味論が紹介されている。この意味論で、特に、必然性演算子の真理条件を □φがwで真 iff wRvとなるすべてのvで、もしφがvで真理値をもつな…

現実性オペレータ(2)

現実性オペレータを言語に足しても、もとの言語で表現できない内容を表現できるとは限らないという先の話だが、少なくとも量化を含む言語では話が違ってくるらしい。例えば 現実には存在しない対象もまた存在することができた という文は ◇∃x@∀y x≠y と書け…

現実性オペレータ

標準的な様相論理の言語に、現実性オペレータ@を付け加えると、色々ふしぎな結果が得られるという話。 構文論は、φがwffならば@φもwffとする。意味論は、標準的な様相論理の言語ではモデル<W, R, V>と相対的に式が評価されるのに対し、@を付け加えた場合…

EFQ

タブローで、矛盾からは何でも言えるということを証明するにはどうするのか、という質問を見かけて、それは考えたことなかったなと思った。もっとも、大して難しいことではないだろうけど。⊥を論理記号に含む言語だったら、⊥に関する推論規則として、すぐに…

ならばの推移性とMP

命題論理の話。 A→B, A |- B A→B, B→C |- A→C この二つの推論図式は互いに独立なのか、という質問を受けたので、少し考えてみた。たぶん独立なんじゃないか。要するに反例モデルを無理やり作ればいいと思うんだ。 "A→B"をふつうの実質条件文としてではなく、…

証明検索

文系の人間にとって、シークエント計算は自然演繹に比べると習得するのが少し難しい。たぶん、練習問題をたくさん解くのが遠回りなようで早道なのだが、証明図を書く練習をするのに便利なサイトを知った。 LL Toy 古典命題論理、直観主義命題論理、様相命題…

アリストテレスの論理学

マレンボンの『後期中世の哲学』を読んでいたところ アリストテレスの論理学書は、『分析論後書』を除いて、古代末期に、ボエティウスによって翻訳されていた。p.58 という箇所が目を引いた。『オルガノン』に関してボエティウスが訳したのは『カテゴリー論…

スマリヤンの三段論法

スマリヤンがお気に入りの論理的推論としてよく取り上げるもの*1。 すべての人は私の赤ちゃんを愛する。∀xLxb 私の赤ちゃんは私だけを愛する。Lbm & ∀x(Lbx → x = m) よって、私は私の赤ちゃんである。m = b 一階言語への翻訳はスマリヤンのものではない。…

旧約女神転生の論理パズル

「旧約女神転生II」というレトロゲームがある。その中で、ちょっとした論理パズルが出てくる。こんな感じだ:ホブリン、トプカプ、マシュリン、ガーゴルの四兄弟の中に、一人だけ嘘つきがいる。それは誰か? ホブリン「マシュリンが近頃嘘つきになってね…あ…

知識のパズル

三人の囚人という有名なパズルがある。 三人の囚人がいた。そこに所長がやって来て、こう言った。「ここに五枚の円板がある。三枚は白で二枚は黒だ。これをおまえたちの背中に貼りつける。他人の背中を見ることは許されるが話をしてはならない。そして、自分…

マッキンゼー式

様相論理のメモ。S4に次の公理Mを加えたものをS4.1という。 M: □◇P→◇□P この名称は論理学者マッキンゼーに由来する。S4.1に対応するフレームの条件は、反射性・推移性、そして、終点の存在(endpoint existence)、すなわち ∀w∃u [wRu & ∀t(uRt → u=t)] で…