Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

哲学

言葉の定義

プラトンは、アカデメイアで学生たちといろいろな言葉を定義することに熱心に取り組んでいたらしい。しかし、その取り組みは一般人からするとあまりにも奇妙だったので笑いのネタにもされてきた。 例えば、「羽のない二足動物(featherless biped)」という…

スペイン語

「おーい、モーク」ローリーは言った。「スペイン語は話せるかい?」「わからないわ。話したことがないから。どうして?」「スペイン人かアルゼンチン人かどこかの野郎が出てきて、持ち馬について母国語で話してるんだ。…*1 話したことがなくったって、スペ…

クサンティッペ

ソクラテスの妻クサンティッペは悪妻として名高い。彼女にまつわるエピソードとして、次のような話がある。 初めのうちはがみがみと小言を言っていたが、のちには彼に水をぶっかけさえしたクサンティッペに対して、彼はこう応じた。「ほうら、言っていたでは…

普遍論争

普遍論争 近代の源流としての 作者: 山内志朗 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2008/01 メディア: 単行本 購入: 5人 クリック: 102回 この商品を含むブログ (50件) を見る だいぶ前に買って読もうとしたのだけど途中で挫折した本なのだが、今ならいけるかな…

アリストテレスの論理学

マレンボンの『後期中世の哲学』を読んでいたところ アリストテレスの論理学書は、『分析論後書』を除いて、古代末期に、ボエティウスによって翻訳されていた。p.58 という箇所が目を引いた。『オルガノン』に関してボエティウスが訳したのは『カテゴリー論…

ラッセルと大陸合理論

ラッセルに関するメモ。 野田又夫によれば、デカルトとラッセルの間には、いくつかの共通点があるのだとか*1。 数学的論理的分析を重んじた 二元論 認識と実践の区別を際立たせる 解析幾何学を数ヶ月で展開したデカルトと、『数学の原理』を数ヶ月で書いたラ…

宮台氏の科学的実在論

こういう文章を見かけたのだが アリ・フォルメン監督『コングレス未来学会議』について書きました なんだかなぁ。科学的実在論/反実在論を取り上げている最初のセクションは本文全体にとってそんなに関係あるんだろうか。関係あるにしても、このセクション…

男女平等と家族制の廃止

プラトンは『国家』5巻で男女平等を主張した(451B-457B)*1。それは当時の世界では喜劇の題材になるほどの非常識だったが、驚くべきことに現在では実現しつつある。 プラトンはさらに続けて、家族制の廃止というアイデアも打ち出した。もっとも、こちらの方…

ビッグクエスチョンズ

ビッグクエスチョンズ 哲学 (THE BIG QUESTIONS) 作者: サイモン・ブラックバーン,山邉昭則,下野葉月 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日: 2015/03/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る この本を読んでいる。ブラ…

ベキ

次の記事を読んで少し考えた。 possible - in saecula saeculorum "-potent"という接尾辞は、数学で「ベキ」と訳されるという話。「冪等idempotent」とか「冪零nilpotent」など。これと関連するのが、累乗を英語では "power" と呼ぶという事実である。例えば…

グルーのパラドクス

定評のある(?)この本を読んでいる。 パラドックスの哲学 作者: R.M.セインズブリー,Richard Mark Sainsbury,一ノ瀬正樹 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 1993/04 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 調べてみたら、こ…

DNモデル、機能的説明

宮台真司の文章にはヘンペルの名前がたまに出てくるけど、なんか私の知ってるヘンペルとだいぶ違う…。気になった点をいくつか記しておく。 ヘンペルやアシュビーの不可能性定理*1 アシュビーは名前しか知らないので措くとして、ヘンペルにそんな禍々しい名前…

排中律

ヒュームの邦訳で見つけた面白い箇所をご紹介。 矛盾は中間がない。有と無は相いれないのように、論理学の矛盾の原理は二つの形式をもつ。一つは「AはBなり」と「AはBならず」とは矛盾である。他は「Aは非Aならず」である*1。 中間がないってのは排中律では……

教養主義

哲学で大学院に行けるかどうかの基準は単純であって、『精神現象学』を読む体力があるかどうか、そして、カント哲学をそれなりに自分なりに理解できるかどうか、というのが俺の考え。それができない人にはちょっとキツイと思うな。 — 國分功一郎 (@lethal_no…

カテゴリー的と定言的

英文でよくあるタイポに、"causal"と"casual"の混同がある。哲学用語で似たような間違いというと、私はよく"categorial"と"categorical"の例を思い出す。定訳はそれぞれ categorial:範疇的 categorical:定言的 だが、"categorical"は「絶対的な」とか「明…

記述理論(2)

「どのFもGである(Every F is G)」は、Fが空である場合にはGが何であれ真になるということを、「aはFである」という単称肯定文において単称名"a"が空である場合にまで拡張することが、一般向けの啓蒙書ではなされがちなのではないか、という疑念を前々から…

不思議の国のアリス

『不思議の国のアリス』に、山形浩生訳があるのを知って、ざっと読んでみた。というか、これまでこの本をちゃんと読んだことがなかった。 不思議の国のアリス (文春文庫) 作者: ルイスキャロル,カズモトトモミ,Lewis Carroll,山形浩生 出版社/メーカー: 文藝…

解明された意識

この連休は、デネットの『解明される意識』を適当に飛ばし読みしたりしてたのだが、心理学の話題に関して少し疑問に思ったことがある。メモしておく。 デイヴィド・ヒューベルとトーステイン・ウィーゼルが1981年にそれによってノーベル賞をもらった視覚に関…

嘘つき

嘘つきのパラドクスは、エピメニデスのパラドクスとも呼ばれる。ディオゲネス・ラエルティオスによると、このエピメニデスさんは、57年もの間眠っていたらしい*1。恐らく、この伝説を下敷きにしてであろう。ラッセルは、エピメニデスが「すべてのクレタ人は…

レモン

イギリスの論理学者E.J. Lemmonについてのメモ。 デイヴィドソンの論文「出来事の個体化」で、レモンとクワインによる出来事の個体化基準が紹介されている。なぜ論理学者のレモンが登場するの?と思っていたのだが、「行為文の論理形式」へのコメントで出来…

ラッセルの自伝

ラッセルの自伝的著作は沢山あるようだが、この本が一番分厚くて情報量が多いようだ。 ラッセル自叙伝〈第1〉1872年-1914年 (1968年) 作者: 日高一輝 出版社/メーカー: 理想社 発売日: 1968 メディア: ? この商品を含むブログを見る 図書館で1巻を借りて来て…

ルカーチ

佐々木力『数学史』という分厚い本を適当に眺めていたら、シェーラーとルカーチの名前が一緒に出てきたのを見つけて驚いた(p.369)。不勉強な私はシェーラーというと、フッサール門下でハイデガーの兄弟子、みたいなことしか知らなかったりする。 佐々木に…

バーカン式

量化様相論理で有名なバーカン式についてのメモ。 厳密含意との関連 一階論理の妥当式である分配法則 ∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ) にあらわれる実質含意を厳密含意に置き換えると ∀x□(α→β)→□(∀xα→∀xβ) となる。一見すると、これは妥当式にみえるが、証明にはバーカン…

消去による帰納

「演繹より帰納」で知られるF.ベーコンは、単純な枚挙帰納法に対して批判的だったという話を最近知った。『ノヴム・オルガヌム』1巻105節に「子供じみている」というフレーズがある。どちらかというと彼は、消去による帰納法(eliminative induction)を好ん…

オッカムの剃刀

以下は、Wikipedia「オッカムの剃刀」についてのノート。 オッカムのウィリアムの「オッカム」には2つの綴りがある。 Ockham Occam どちらでもよいのかな…。 オッカムの剃刀に似た格言が幾つか取り上げられている。ニュートンからの引用は、引用箇所が明示さ…

公理と証明

公理は証明のできない仮定とか前提だとよく言われる。しかし、現代の証明概念では公理も証明できるとされる。なぜかというと、理論θにおける証明は、θ の言語の文から成る列であり、その列のひとつひとつが、 θ の公理であるか その列において先立つ文から、…

分析哲学の新刊

最近出版された分析哲学の本を二冊購入。 松阪陽一(編)『言語哲学重要論文集』(春秋社) タイトルの通り、言語哲学の論文集。ドネランの論文が訳されているのが嬉しい。しかし、これまでにすでに日本語に訳されている論文が半分近くあるのが残念。80年代…

つつましい実証主義

柄谷行人が近著『哲学の起源』について『atプラス 思想と活動』で対談をしていて、こういうことを言ってる。 初期ギリシャ哲学というのは、資料がろくにないから、推定するほかありません。その意味では、僕のように専門的な知識を持たない者には有利なので…

厳密含意か厳密条件法か

様相論理の歴史的な解説を読むと、C.I.ルイスの名前を見かける。それで「厳密含意strict implication」という言葉を目にするのだが、私はてっきり今でもこの用語を使うのだと思っていた。でも、条件法と含意との区別を守ろうとするなら、むしろ「厳密条件法s…

ヘンペルのカラス

ここ数日、確証confirmationの概念について少し調べていたので、簡単にメモしてみる。文同士の関係としての確証関係は、演繹関係のちょうど逆であるように思える。そこで H ├ E ⇔ E confirm H. と定義することが考えられる。もっとも、単独の仮説から観察文…