Skinerrian's blog

論理学・哲学・科学史・社会学などに興味があるので、その方面のことを書きます。更新は不定期。

哲学

パトナムの訳書

ヒラリー・パトナムの論文集『実在論と理性』の訳者あとがき(p.384)で、飯田先生は次のように書いている。 それまでパトナムの著作の「翻訳」がなかったわけではない。ところが、そのうちの一冊は、それを手にとって見たことのあるひとならしているように…

アリストテレスの動物研究

著名な生物学者であるメダワー夫妻の『アリストテレスから動物園まで』という本を読んでいる。この本は生物学の事典なので、適当につまみ食いするのに向いている。各々の項目はA to Zで並んでおり、一番最後の項目はたしかに「動物園(Zoo)」なのだが、一番…

述語のイミ

飯田隆『言語哲学大全1』から。 一座の一階述語のイミは、その述語を満足する対象の全体によって与えられ、二座の一階述語のイミは、その関係を満足する対象の対の全体によって与えられる p.111 ここでいう「全体」は集合のことだろうか。しかし、集合は対象…

事実と事態

本屋の中でぶらついていたら、こういう本が目に留まった。 読まずに死ねない哲学名著50冊 (フォレスト2545新書) 作者: 平原卓,横槍メンゴ 出版社/メーカー: フォレスト出版 発売日: 2016/03/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 見覚えのあ…

言葉の定義

プラトンは、アカデメイアで学生たちといろいろな言葉を定義することに熱心に取り組んでいたらしい。しかし、その取り組みは一般人からするとあまりにも奇妙だったので笑いのネタにもされてきた。 例えば、「羽のない二足動物(featherless biped)」という…

スペイン語

「おーい、モーク」ローリーは言った。「スペイン語は話せるかい?」「わからないわ。話したことがないから。どうして?」「スペイン人かアルゼンチン人かどこかの野郎が出てきて、持ち馬について母国語で話してるんだ。…*1 話したことがなくったって、スペ…

クサンティッペ

ソクラテスの妻クサンティッペは悪妻として名高い。彼女にまつわるエピソードとして、次のような話がある。 初めのうちはがみがみと小言を言っていたが、のちには彼に水をぶっかけさえしたクサンティッペに対して、彼はこう応じた。「ほうら、言っていたでは…

普遍論争

普遍論争 近代の源流としての 作者: 山内志朗 出版社/メーカー: 平凡社 発売日: 2008/01 メディア: 単行本 購入: 5人 クリック: 102回 この商品を含むブログ (50件) を見る だいぶ前に買って読もうとしたのだけど途中で挫折した本なのだが、今ならいけるかな…

アリストテレスの論理学

マレンボンの『後期中世の哲学』を読んでいたところ アリストテレスの論理学書は、『分析論後書』を除いて、古代末期に、ボエティウスによって翻訳されていた。p.58 という箇所が目を引いた。『オルガノン』に関してボエティウスが訳したのは『カテゴリー論…

ラッセルと大陸合理論

ラッセルに関するメモ。 野田又夫によれば、デカルトとラッセルの間には、いくつかの共通点があるのだとか*1。 数学的論理的分析を重んじた 二元論 認識と実践の区別を際立たせる 解析幾何学を数ヶ月で展開したデカルトと、『数学の原理』を数ヶ月で書いたラ…

宮台氏の科学的実在論

こういう文章を見かけたのだが アリ・フォルメン監督『コングレス未来学会議』について書きました なんだかなぁ。科学的実在論/反実在論を取り上げている最初のセクションは本文全体にとってそんなに関係あるんだろうか。関係あるにしても、このセクション…

男女平等と家族制の廃止

プラトンは『国家』5巻で男女平等を主張した(451B-457B)*1。それは当時の世界では喜劇の題材になるほどの非常識だったが、現在では実現しつつある。 プラトンはさらに続けて、家族制の廃止というアイデアすら打ち出した。こちらのアイデアは、今も昔も人気…

ビッグクエスチョンズ

ビッグクエスチョンズ 哲学 (THE BIG QUESTIONS) 作者: サイモン・ブラックバーン,山邉昭則,下野葉月 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン 発売日: 2015/03/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る この本を読んでいる。ブラ…

ベキ

次の記事を読んで少し考えた。 possible - in saecula saeculorum "-potent"という接尾辞は、数学で「ベキ」と訳されるという話。「冪等idempotent」とか「冪零nilpotent」など。これと関連するのが、累乗を英語では "power" と呼ぶという事実である。例えば…

グルーのパラドクス

定評のある(?)この本を読んでいる。 パラドックスの哲学 作者: R.M.セインズブリー,Richard Mark Sainsbury,一ノ瀬正樹 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 1993/04 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (1件) を見る 調べてみたら、こ…

ヘンペルに関する誤解

宮台真司の文章にはヘンペルの名前がたまに出てくるけど、なんか私の知ってるヘンペルとだいぶ違う…。気になった点をいくつか記しておく。 ヘンペルやアシュビーの不可能性定理*1 アシュビーは名前しか知らないので措くとして、ヘンペルにそんな禍々しい名前…

排中律

ヒュームの邦訳で見つけた面白い箇所をご紹介。 矛盾は中間がない。有と無は相いれないのように、論理学の矛盾の原理は二つの形式をもつ。一つは「AはBなり」と「AはBならず」とは矛盾である。他は「Aは非Aならず」である*1。 中間がないってのは排中律では……

教養主義

哲学で大学院に行けるかどうかの基準は単純であって、『精神現象学』を読む体力があるかどうか、そして、カント哲学をそれなりに自分なりに理解できるかどうか、というのが俺の考え。それができない人にはちょっとキツイと思うな。 — 國分功一郎 (@lethal_no…

カテゴリー的と定言的

英文でよくあるタイポに、"causal"と"casual"の混同がある。哲学用語で似たような間違いというと、私はよく"categorial"と"categorical"の例を思い出す。定訳はそれぞれ categorial:範疇的 categorical:定言的 だが、"categorical"は「絶対的な」とか「明…

記述理論(2)

「どのFもGである(Every F is G)」は、Fが空である場合にはGが何であれ真になるということを、「aはFである」という単称肯定文において単称名"a"が空である場合にまで拡張することが、一般向けの啓蒙書ではなされがちなのではないか、という疑念を前々から…

不思議の国のアリス

『不思議の国のアリス』に、山形浩生訳があるのを知って、ざっと読んでみた。というか、これまでこの本をちゃんと読んだことがなかった。 不思議の国のアリス (文春文庫) 作者: ルイスキャロル,カズモトトモミ,Lewis Carroll,山形浩生 出版社/メーカー: 文藝…

植物と人間

アニメ『サカサマのパテマ』を観た。このアニメでは、上下が逆転した二つの世界とそこで暮らす人種を描いている。監督によれば、青空の下で寝そべっていると、空に向かって落ちていきそうな錯覚を映像にしたかったのだそうだ。映像は美しくて、なかなかイン…

解明された意識

デネットの『解明される意識』を読んでいて少し疑問に思ったことを二つほど。 デイヴィド・ヒューベルとトーステイン・ウィーゼルが1981年にそれによってノーベル賞をもらった視覚に関する「発見」のいくつかにしても、現在では白紙に戻されている p.59 これ…

嘘つき

嘘つきのパラドクスの有名な例として、エピメニデスのパラドクスが知られている。ディオゲネス・ラエルティオスによると、このエピメニデスという人は、57年もの間眠っていたらしい*1。恐らく、この伝説を下敷きにしてであろう。ラッセルは、エピメニデスが…

レモン

イギリスの論理学者E.J. Lemmonについてのメモ。 デイヴィドソンの論文「出来事の個体化」で、レモンとクワインによる出来事の個体化基準が紹介されている。なぜ論理学者のレモンが登場するの?と思っていたのだが、「行為文の論理形式」へのコメントで出来…

ラッセルの自伝

ラッセルの自伝的著作は沢山あるようだが、この本が一番分厚くて情報量が多いようだ。 ラッセル自叙伝〈第1〉1872年-1914年 (1968年) 作者: 日高一輝 出版社/メーカー: 理想社 発売日: 1968 メディア: ? この商品を含むブログを見る 図書館で1巻を借りて来て…

ルカーチ

佐々木力『数学史』という分厚い本を適当に眺めていたら、シェーラーとルカーチの名前が一緒に出てきたのを見つけて驚いた(p.369)。不勉強な私はシェーラーというと、フッサール門下でハイデガーの兄弟子、みたいなことしか知らなかったりする。 佐々木に…

バーカン式

量化様相論理で有名なバーカン式についてのメモ。 厳密含意との関連 一階論理の妥当式である分配法則 ∀x(α→β)→(∀xα→∀xβ) にあらわれる実質含意を厳密含意に置き換えると ∀x□(α→β)→□(∀xα→∀xβ) となる。一見すると、これは妥当式にみえるが、証明にはバーカン…

消去による帰納

「演繹より帰納」で知られるF.ベーコンは、単純な枚挙帰納法に対して批判的だったという話を最近知った。『ノヴム・オルガヌム』1巻105節に「子供じみている」というフレーズがある。どちらかというと彼は、消去による帰納法(eliminative induction)を好ん…

オッカムの剃刀

以下は、Wikipedia「オッカムの剃刀」についてのノート。 オッカムのウィリアムの「オッカム」には2つの綴りがある。 Ockham Occam どちらでもよいのかな…。 オッカムの剃刀に似た格言が幾つか取り上げられている。ニュートンからの引用は、引用箇所が明示さ…